フェルメールの光とラ・トゥールの焔-「闇」の西洋絵画史 [アート]
Art 2 フェルメールの光とラ・トゥールの焔 ─「闇」の西洋絵画史 (小学館101ビジュアル新書)
- 作者: 宮下 規久朗
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2011/04/01
- メディア: 単行本
内容説明
名画に見る「闇」がつくった西洋絵画の歴史
17世紀西洋絵画の巨匠ラ・トゥールやレンブラント、フェルメールといった、日本で人気の高い画家に共通している特徴は、精神性の高い、静謐で幽玄な光と闇の描写にあります。それらの画家の絵画に描かれた深く豊かな闇の表現は、『陰影礼賛』を素直に理解し受け入れる感性をもった日本人にとっては、親しみやすく感じられるものです。しかし、「闇」を描くことは、西洋絵画の歴史の中では、極めて革新的な出来事でした。なぜなら、中世以降、西洋絵画は神を讃えることを目的に描かれたため、世界を照らし出す光に包まれているべきものだったからです。
本書では、イタリア・ルネサンスの巨匠レオナルド・ダ・ヴィンチによって確立された革新的な「闇」の表現が、バロック絵画の先駆者カラヴァッジョによる光と闇がドラマティックに交錯する絵画を経て、いかにしてラ・トゥール、レンブラント、フェルメールらの静謐で精神的な絵画を生み出していったのか、西洋絵画における「闇」の歴史をたどります。わかりやすい文章と数多くの美麗で魅力的な図版によって、初心者も経験者もともに、これまでになかった斬新な視点から西洋絵画の歴史が楽しく読める書物となっています。
~目次~
はじめに 西洋絵画に宿る「闇」
第一章 闇の芸術の誕生-レオナルド・ダ・ヴィンチとルネサンスの巨匠たち
1 はじめに光ありき
2 「夜景画の誕生」
3 レオナルド・ダ・ヴィンチが生んだ深い闇
4 ラファエロの「闇のドラマ」
5 ヴェネツィアで流行した夜景画
第二章 光と闇の相克-カラヴァッジョ
1 ロンバルディアの先駆者たち
2 「斜めに差し込む光」の衝撃
3 現実の光に託した神の存在
4 逃亡のなかで深まる闇
第三章 ヨーロッパに広がる闇-カラヴァッジョ派とバロックの巨匠たち
1 ローマを席巻するカラヴァッジョ様式
2 ナポリからスペインへ、激しさを増す闇
3 光と闇を一体化させたベラスケス
4 もうひとつの闇の系譜、エルスハイマーとルーベンス
第四章 心の闇を照らす焔-ラ・トゥール
1 静謐な表現を生んだフランスのカラヴァッジョ派
2 貧者たちの闇
3 闇の時代に深まる死への瞑想
4 聖化される光、生への希望
第五章 闇に輝く黄金の光-レンブラント
1 明暗表現がもたらしたオランダ絵画の黄金時代
2 やわらかな闇の効果
3 内面からの精神の輝き
第六章 闇を溶かす光-フェルメール
1 カラヴァッジョ派としての出発
2 レンズがもたらした透明な光
3 光の勝利
第七章 闇の近代-光と闇の継承者たち
1 テレブリスムの残滓
2 人の心に潜む闇
3 20世紀の闇
あとがき
主要参考文献