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ベルト・モリゾ展 [07展覧会感想]

図録新宿の損保ジャパン東郷青児美術館で開催されている「-美しき女性印象派画家-ベルト・モリゾ展」を観に行きました。この展覧会は日本国内では初めて開催される本格的なベルト・モリゾの回顧展だそうで、個人蔵の作品を中心に約60点が展示されるものだそうです。
『今から100年以上前の1874年春、保守的な伝統に縛られていたサロン(官展)に対抗するようにして、身の回りの風景や出来事をすばやいタッチで明るく描いたルノワールや、モネ、ドガなどが、自分たちの手で作品を自由に展示することが出来る展覧会、後に、「印象派展」と呼ばれることになる記念すべき展覧会を開催しました。この第1回目の展覧会に紅一点参加していたのがベルト・モリゾ(1841~95年)です。モリゾは女性ならではの視点で作品を描きましたが、特に娘ジュリーへ優しいまなざしを向けながら描いた作品には、母としての愛情が満ちあふれ、見るものの心を穏やかにしてくれることでしょう。本邦初の本格的なモリゾの回顧展となるこの展覧会では、個人蔵の作品を中心に約60点の作品を展示します。女性として画家として生きたベルト・モリゾの作品を心ゆくまでお楽しみください。』(チラシより)


~展示構成~
ほぼ年代順♪

まずはベルト・モリゾの姉、エドマの貴重な作品から。

エドマ・モリゾ《描くベルト・モリゾの肖像》最初の展示室の作品は、エドマ・モリゾ《描くベルト・モリゾの肖像》。ベルト・モリゾの姉、エドマが描いたベルト・モリゾの肖像画。エドマの作品を実際に鑑賞するのは初めて。第一印象は、うまい!格好いい!!カンヴァスに向かう姿勢が見事に表現されています。師であるカミーユ・コローはエドマの才能を高く評価し、アトリエにエドマの《海の裂け目》という絵を保管していたそうです。エドマ・モリゾが画家としての道を進んでいたら印象派の画家たちに多大なる影響を及ぼしたのかもしれません。女性が画家として生きることの困難なこの時代、このようにして葬られていった才能がたくさんあったと考えると胸が痛みます。この作品、額縁が地味シンプルすぎ。シンプルだからこそ、肖像に視線が集中するのかもしれませんが、素晴らしい作品なんだしもっと立派な額に入れて飾ってあげたい。2月にオルセー美術館展で鑑賞したベルト・モリゾ《ゆりかご》[1872]のモデルはこのエドマ。
この展示室は主に資料展示。(今展の図録もなかなか分厚いですが、)ガラスケースに入れて展示されていたベルト・モリゾ展の分厚い図録、私も欲しいです!!表紙は《窓辺の若い女性》(ファーブル美術館蔵)だったかな。。。

初期の貴重な作品はヴェロネーゼの模写

《磔刑(ヴェロネーゼに基づく模写)》では、メインのベルト・モリゾ。まずは、《磔刑(ヴェロネーゼに基づく模写)》[1858]17歳(※1841年1月生まれ)の時の作品ということでしょうか。初期の作品はこの作品と1861年初め(20歳になったばかりの時)に描いた《シモン家の食事》[1861](マルモッタン・モネ美術館蔵)の2点の模写しかないそうです。《シモン家の食事》は04年のマルモッタン美術館展で展示されていました♪図録の解説によると、「モリゾは、古典の精神の擁護者たちが当時崇拝していたラファエロにもミケランジェロにも関心を抱かず、ヴェネツィア派の色彩と表現力の自由さの方を好んだ」そうです。また、このヴェロネーゼの絵は高いところに展示されていたそうで、「・・・高く展示された絵の遠近感が強調され歪む結果起こる視覚的効果を修正しながら、絵が普通の高さにあるかのようにうまく表現して、作品を復元する能力を証明している。」とのこと。Σ(ヾ ̄▽ ̄)ヾ!!17歳でこれだけのことができちゃうんですか・・・はぁ。。。ちなみにジュリーもドガの厳しい指導のもとにルーヴル美術館所蔵のヴェロネーゼの模写を行っているとのこと。
※このあと、渋谷で開催されている『ヴェネツィア絵画のきらめき』展を鑑賞しました♪(^_^)/

フランソワ・ブーシェのきらびやかな絵が好きで、
白を使って絵に光を満ちわたらせる方法をブーシェの作品から学ぶ

最晩年までぶれることなく徹底され、モリゾの画風を確立させている

《淡いグレーの服を着た若い女性》《服を着る女性 または ストッキングをはく若い女性》《淡いグレーの服を着た若い女性》[1879]は早い筆致とグレーの使い方が巧みで水彩のよう。服のシワや光の描写が素晴らしい。塗り残しいっぱいの背景の処理が計算し尽くされているかのようで見応えがあります。この塗り残しにより透明感がでているのかな。また、奥行きや開放感も感じられる。女性の柔らかい表情も魅力的♪《服を着る女性 または ストッキングをはく若い女性》[1880]は光の描写が見事。右奥の窓から差し込む光とそれよってもたらされる室内の陰影が見応えあります。もちろん、いずれの作品も白色がポイントですが、それを効果的に見せる為の色使いが本当に素晴らしい!

「そう、わたしもみんなと同じように、赤ちゃんが男の子だったらと思うわ。第一に顔立ちが顔立ちですもの。それに男の子だったら著名な家名を継いでくれるし・・・・・・それになんといってもみんな男の子が好きですからね・・・・・・あなたの赤ちゃんは天使のよう。でもわたしの赤ちゃんは石畳みたいな顔をしていて醜いわ・・・・・・あわれなジュリーの自慢は大きな頬っぺときれいな肌の色だけ。
・・・ジュリーとローズの似ているところは大きなお腹だけ・・・・・・わたしの娘は骨の髄までマネ家の血筋です。わたしに似たところは皆無です。-姉イヴ宛のユーモアあふれる手紙 (印象派の人びと ジュリー・マネの日記 より)」

《庭のウジェーヌ・マネと娘》《庭のウジェーヌ・マネと娘》[1883]は今回とても楽しみにしていたもののひとつ。穏やかで優しい作品。左の塗り残しが透明感と奥行きを出しているように感じます。この緑は必見!!色の置き方や組み合わせ方、タッチ、繊細だけど大胆で見応えがあります。《寓話 または 乳母と赤ちゃん》全体が円を描いているようで、視点が中心の二人へと自然に導かれていく。ジュリーちゃんの後姿が可愛い♪今回のお気に入りのひとつ。 《寓話 または 乳母と赤ちゃん》[1881または1883]は何気ない日常を描いたものですが、とても穏やかで癒される。青と白が鮮やかで綺麗でした。ジュリーちゃんもパジーさんも可愛い♪キャーq(≧∇≦*)(*≧∇≦)pキャー乳母のパジーさんはお気に入りのモデルだったそうでモリゾの作品に度々登場します。日向と日陰の色の変化も素晴らしいですね。早いタッチで描かれていますが荒っぽさは全く無く、とても繊細で優雅。こちらもお気に入り作品のひとつ、ポストカードを買っちゃいました~(^_^)/

あひるんるん♪あひるんるん♪僕た~ち~は~

モリゾが描いているのは・・・
   ・・・白鳥です ・・・鴨です ・・・ガチョウです ・・・・・・他社のCMです

でも、この唄が頭の中でくるくると回っていました・・・(/ー\*) イヤン♪

《ブーローニュの森の湖にて》《湖にて》《ブーローニュの森の湖にて》[1884]はまさに瞬間を描いたかのような作品。モネ《舟遊び》[1887](国立西洋美術館蔵)、《ばら色のボート》[1890](ポーラ美術館蔵)を連想させる。「・・・構図、色彩、トーンのバランスがとりわけ成功した作品である。それゆえに、友人ドガの描く数多くの踊り子のシーンのように、作者は二人の人物の顔のディテールには関心を持たないのだ。その意味でこの作品は、印象派に敵対するライヴァルにとっては未完に見えるかもしれないが、ベルト・モリゾにとっては完成品であった。・・・この絵は連なる3つの層から成る。小船と湖と対岸。色から判断して、ジュリーは前景、ミリーは後景にいる。水面には対岸の木々が濃く映っているのが見える。木そのものは見えないが、推測される。ここでもまた空が無く、水平線が無い。このような側面は後にモネが睡蓮の作品で到達するまで、水のある風景のシリーズにおいて無限に変化し、発展し、拡大されることになる。このような構図をもって、ベルト・モリゾは控えめながら革新をもたらしている。岸から現場を捉え、張り出して見た視点で、このシーンに写真的とも言えるフレーミングを採用したのだ。」そうだ。《湖畔》《寓話 または 乳母と赤ちゃん》は斜めの構図から2つの層に分けられていましたが、今回は3つです。o(≧∇≦o)(o≧∇≦)o《湖にて》[1884]《ブーローニュの森の湖にて》からジュリーちゃんだけトリミングしたよう。この作品はトーンと色彩の、和らいだ光とその反射のハーモニーの習作だそうだ。これはジュリー・マネの日記を読んだ時に印象的だった作品。まさか実物に出会えるとは思いませんでした♪(^_^)/1883年以来、ブーローニュの湖畔で遊ぶ少女のテーマは繰り返し描かれるようになったそうですが、このブーローニュの湖畔を描いた作品でお気に入りは《湖畔》[1883](マルモッタン・モネ美術館蔵)です。※この作品は展示されていません
鴨とガチョウのみを描いた《ガチョウ》[1885と1891年]という大きな作品も見応えのあるものでした。「恐らく1891年に彼女はこの絵を手直しして、島と正面の湖畔の緑を描き変えているはずである。この部分はモネのセーヌからの眺めを描いた作品を思い起こさせる。この手直しは画家がその出来に不満を抱いたからではなく、彼女がメズィーで描いたばかりの《横たわる羊飼い》と調和させたかったのだろう。」とのこと。そーゆーのは会場の作品解説に載せとけって・・・えっ、作品解説にあった?単なる見落とし??(たぶん記載されていなかったと思います、自信はありません。。。)

横顔や後姿ばっかりになってしまいましたね~

    ではジュリーちゃんを正面から描いた作品を♪(・_・)/ハッ。

《人形を抱く少女》《人形を抱く少女》[1884]です。えっ、ちょっとご機嫌斜め!?(・_・;)お人形で遊びたかったのに・・・という声が聞こえてきそうですねぇ・・・(^_^)ぎゅっっと握っている手の様子から、人形は絶対に離さないという強い意志が窺えます。「・・・かなり居心地悪気に安楽椅子に座っている。・・・奥深く身を沈めて、ジュリーは短すぎる脚をどう置いていいものか分からず、ほとんど寝そべった状態である。モデルが姿勢を変えたくなるほど、かなり不便な姿勢・・・」だそうだ。(>_<)後にジュリーはこの絵を「自分のベッドの上に掛け、好みと愛着を示した」そうです。ついつい、ジュリーちゃんの仕草や表情に目がいってしまいますが、この色の組み合わせはいいですね~(^o^)丿この作品は、ドガが構図と視点と背景のアドバイスをしたメアリ・カサット《青い肘掛け椅子の少女》(ナショナル・ギャラリー、ワシントン:メロンコレクション)に影響を受けているようです。そうそう、会場にはモリゾとカサットが一緒に鑑賞した浮世絵展の図録が展示されていました。ちなみに、左の植木の鉢はエドゥアール・マネからプレゼントされた中国製の陶器の飾り鉢だそうで、《飾り鉢で遊ぶ子供たち》[1886](マルモッタン・モネ美術館蔵)という作品では、「・・・鉢のなかを泳ぐ赤い金魚のような魚で遊んでいるのだろう。(04マルモッタン美術館展図録より)」とあります。植木の飾り鉢は金魚鉢になったようです。。。
《青い肘掛け椅子の少女》TaekoLovesParisさん(私が行った美術館、レストラン)が画像を掲載されています。(「パリのアメリカ人1860-1900年」企画展(ボストン美術館)

《マンドリン》《コテージの室内(ジャージー島の室内)》[1886]はチラシの表に使用されているもの。図録の表紙もこれ。早いタッチと優しい色合いが特徴の素敵な作品です。透明感のある綺麗な青がメインの室内、そして白。窓の外に見える庭の緑と海の青。手前の椅子、そしてジュリーちゃん。それぞれが主張しているようなしていないような絶妙というか不思議なバランス。穏やかな気持ちになれる素晴らしい作品です。額絵を買ってしまいました!!(^_^)/《少女と犬》[1886]は椅子に座ったジュリーちゃんが膝に犬を乗せている作品。犬がとても可愛い。マルチーズかな?モコモコした感じがナイス!!飾り鉢には椰子の木のようなものが植えられています。《マンドリン》[1889]はジュリーちゃんの貴重なショートヘアの作品。「トーンと色彩のコントラストが念入りに研究され、このシーンに親密さを持たせている。金髪で短めの髪が光の反射で金色のトーンを帯びている。髪の毛が楽器の材質の木と調和しているかのようだ。唇のピンク色と頬に軽く差した色味、そして特に珊瑚の首飾りによって、肌の白さが際立っている。《マンドリンを弾く少女 または マンドリンを弾くジュリー》左腕のブレスレットが留め金の繊細さを引き立て、モデルの若さとエレガンスを表している。ピンクとブルーのドレスが腕を露にし、ピンク色のベルトがドレスを2部に分けている。胸部では青色が基調でピンクは数本のプリーツで表されるのみ、逆に下部ではピンク色(時間が経って薄らいだ様だが)が優勢で、青は服のプリーツを表すかのようである。」とのこと。ジュリーちゃんの真剣な表情とドレスがとても見応えあります♪ルノワールもこの絵に大きな愛情を抱いていたそうです。翌年に描かれた《マンドリンを弾く少女 または マンドリンを弾くジュリー》[1890]は水彩画のようにさらさらと描かれた油彩画。ドレスがとても綺麗!!背景の処理の仕方がいいですね~ジュリーちゃんの笑顔も可愛い。前年に描かれたショートヘアの方が大人びてみえるなぁ。。。《本を持つジュリー・マネ》[1889]はドレスがとても綺麗でした。1892年に開催された初の個展に出品されたものだそうで、個展には《横たわる羊飼い》も出品されていたとのこと。《ばら色の服の少女》[1888]も綺麗なドレスが特徴のパステル画。モデルの少女はジャンヌ・ボネというそうで、油彩2点の他、いくつかのパステル画でモデルをつとめているそうです。 

見事な色彩感覚を堪能♪ 

  
【左】《横たわる羊飼い》[1891]350×560
【右】《横たわる羊飼い》[1891]630×1140(マルモッタン・モネ美術館蔵)※この作品は展示されていません

  
【左】《横たわる裸の羊飼いの少女》[1891]575×864
【右】《横たわる裸の羊飼いの少女(習作)》[1891]442×559

  
【左】《桜の木》[1891]550×330
【右】《桜の木》[1891]1540×840(マルモッタン・モネ美術館蔵)※この作品は展示されていません
《横たわる羊飼い》《桜の木》は2004年のマルモッタン美術館展(東京都美術館)の時に感動してその場からなかなか動くことの出来なかった作品。いずれも大きな作品で圧倒されるものでしたが、今回はそれらの別バージョンで小さなものが展示されていました。鑑賞前にマルモッタン美術館展の図録をチェックしていたこともあり、またまた感動!!とても見応えありました♪(^_^)/でも、お気に入りは、いずれもマルモッタン美術館の所蔵作品ですけどね!(≧▽≦)b

 

《夢見るジュリー》《ヴァイオリンの稽古》《ジュリー・マネとグレーハウンド犬ラエルト》
【左】《夢見るジュリー》[1894]
【中】《ヴァイオリンの稽古》[1893]
【右】《ジュリー・マネとグレーハウンド犬ラエルト》[1893](マルモッタン・モネ美術館蔵)この作品は展示されていません
《夢見るジュリー》は最晩年の作品。ウジェーヌが亡くなって物思いに沈む様子を表現したものだそうだ。ドレスがとても綺麗でした。もちろんジュリーも綺麗です。そしてそれらを上手く引き立てているのが背景の処理。必見!!「・・・他の多くの作品に反して、このポートレートの構図はほぼ古典的ともいえ、モデルは三角の形を占めている。・・・構図は当時のアカデミックな規範から外れている。ドレスのアラベスク、そして背景の太いラインにおいては、テクニックも構図もモダンである。輪郭も示されている。影の動きがフォルムを控えめになぞっている。これと等質の背景が当時のルノワールの作品にも見れるが、それは次世紀のある種の作品を先取りしている。その背景は、ジュリーの顔とドレスを濃密なものとしている。・・・『・・・トーンの融和を実現し、輪郭線をくっきり強調した最近のものである。デッサンは一気に描かれていながら見事に正確であり、最も緻密な研究の成果が微妙な色合いに証明されている。』」とのこと。モリゾの描くドレスは本当に綺麗です。単色のドレスにもかかわらず、様々な色が使われています。《ヴァイオリンの稽古》《ジュリー・マネとグレーハウンド犬ラエルト》は同じドレスかな。《ヴァイオリンの稽古》で背景の右に描かれてるのはマネの作品だそうです。他の絵は誰の作品でしょうか、ちょっと気になります。ヾ( ̄ー ̄)ゞ このグレーハウンド犬はマラルメがジュリーにプレゼントしたもの。おっ、飾り鉢!!(^_^)《ジュリー・マネとグレーハウンド犬ラエルト》は、モリゾの死後、印象派の友人たちが開いた展覧会においてモネが購入したそうで、ベルト・モリゾの回顧展の際にはこの作品を持参し、ジュリーに「いい絵だね」と言ってジヴェルニーに来るよう招待したそうで、ジュリーも大好きなこの作品がモネのものになってうれしいと記している。

《二人姉妹》《かわいいマルセル》《二人姉妹》[1894]木炭と赤チョーク、紙はサラサラッと描いたようなとても綺麗な素晴らしいデッサン。「・・・作品を準備するとき、ベルト・モリゾは3つのデッサンに時間を割いた。人物を配置する場所とマスの塊のバランスを決める前に木炭とチョークか赤鉛筆でデッサンをした」そうだ。この《二人姉妹》については、モデルがポーズする機会を利用して、ジュリー・マネも描いているそうです。ただし、ジュリーは母の位置から一歩下がったところで自分の目の高さから描いているためモデルの位置やアングルが微妙に違います。図録にはモリゾの油彩とジュリーの油彩が参考として掲載されています。会場の作品解説では、このモデルのどちらかがマルセルと紹介されていたようにも思います。違ったらごめんなさい。ぺこ <(_ _)>《かわいいマルセル》[1895](マルモッタン・モネ美術館蔵)というモリゾの最後の作品のモデルで、モリゾの家の管理人の子供。※この作品は展示されていません

《フラジオレット》[1890]は4色のリトグラフ。この作品の印刷は2部しかなく、もうひとつはマルモッタン美術館に遺贈されおり、「マルモッタン美術館では“色鉛筆”と書かれているが、それは間違いで、これはリトグラフである。」とのこと。マルモッタン美術館展の際に《木の笛》というタイトルで展示されていました。色鉛筆といわれて何ら疑念を抱かなかったゾ・・・(・_・;)
《ジュリーの胸像》[1886]ブロンズベルト・モリゾ唯一の彫像だそうで、ロダンの技法をもちいているとのこと。めちゃめちゃ可愛い♪キャーq(≧∇≦*)(*≧∇≦)pキャー絵画や写真でジュリーちゃんの可愛らしさは十分すぎるくらいに伝わってきますが、やはり立体は違いますよっ!本当に可愛い♪これは必見です!!(≧▽≦)b(図録の写真はイマイチいけてないけど・・・(・_・;))モネが展覧会の件でモリゾを訪ねた際にこの彫刻の石膏版に目をとめ、賞賛し、展覧会での展示を勧め、鋳造方法がわからないと答えたモリゾに対しモネはロダンに掛け合うことを提案したそうです。初期のヴェロネーゼの模写では視覚的に修正・再構成するという高い復元能力を平面上で証明していましたが、その高い能力は立体物においてより効果的に発揮されているように感じました。これはとても貴重な作品です。
《ベルト・モリゾのパレット》もとても貴重な展示。パレットが展示されるのは1961年にスイスで開催された展覧会に続いて2回目。印刷物に載るのは、今回の展覧会(図録)が初めてだそうです!!私は油彩の経験が無いのでここに置かれている色や使い方については全くわかりませんが、黒がほとんど使われていないように感じました。トーンを落とすためのブレンド用という感じでしょうか。明るい色が多く、パレット上ではそれほど色を混ぜ合わせていないようにも思える。このパレットにはジュリーちゃんが描かれています♪しかも可愛い!!キャーq(≧∇≦*)(*≧∇≦)pキャー


【左】《猫を抱く少女(ルノワール作《ジュリー・マネ》による)》[1889]ドライポイント
【中】《猫を抱く少女(ルノワール作《ジュリー・マネ》による)》[1889]銅板
【右】ピエール=オーギュスト・ルノワール《ジュリー・マネ(あるいは猫を抱く子供)》[1887]油彩(オルセー美術館蔵)※この作品は展示されていません


【左】エドゥアール・マネ《ベルト・モリゾのシルエット》[1872~74]リトグラフ
【中】エドゥアール・マネ《ベルト・モリゾのシルエット(黒)》[1872~74]リトグラフ
【右】エドゥアール・マネ《すみれのブーケをつけたベルト・モリゾ》[1872]油彩(オルセー美術館蔵)※この作品は展示されていません
いずれも2月に鑑賞したオルセー美術館展(東京都美術館)で感動した作品に関する展示。

「影絵芝居や似顔絵や風刺画の横顔の絵に似せて、マネはモデルになった人々の特徴を捉えるためにシルエットという手法をとった。・・・素晴らしい淡水画にみられるように、フォルムや存在を表す素描にはいくつかの特徴だけで充分だ。自ら選んだテクニックで、マネはベルト・モリゾの視線を強調する。風変わりな帽子も同様だ。」とのこと。この油彩はテオドール・デュレに売却されたが、1894年の売り立てで ベルト・モリゾが購入したそうです。

興味深い記述をちょこっとご紹介♪
1895年12月3日 ジュリー、マネの肖像画を模写する
「エドワール伯父さんが描いたママンの肖像の模写をはじめた。黒いドレスと帽子、コルサージュにすみれの花束をつけた逆光の肖像。ママンがデュレ・コレクションで買ったもの。わたしの寝室に飾ってある。いつもベッドから眺めている。なんて素晴らしい仕上がりなんだろう。たった一度か二度で描きあげてしまったなんて信じられない。ママンが言っていたけれど、お祖母さん[マリー=コルネリー・モリゾ夫人]の木曜日の夜会のまえにポーズしたんですって。その日、伯父さんはママンにパパと結婚するよう勧めたという。ずいぶん長々とその話をしたらしい。(印象派の人びと ジュリー・マネの日記 より)」

 ベルト・モリゾについての大雑把な説明はこちらの記事に掲載しています。
http://blog.so-net.ne.jp/ryuu/2007-01-23

 

心を奪われるような突き抜けた作品は少ないものの、質の高い作品が揃った充実した展覧会。画集で見たことのあるものが多く新鮮味に欠けるかな~なんて思っていたら、銅板や彫像、パレット等、とても貴重な展示にビックリ!!(^_^)/04年のマルモッタン美術館展、モネ目当てに出かけてモリゾの作品に洗脳され魅了され、現在に至っております。マルモッタンのルアール コレクション(旧ジュリー・マネ コレクション)の方が素晴らしい作品が揃っていましたが、日本で個人蔵の作品をまとめて鑑賞する機会は今後そう多くはないと考えられ、とても深みのある展覧会だと思います。画集の印象からすると、前回の展覧会と今回の展覧会は相互補完的な関係かな。出来ることなら、大きな会場で両方まとめて鑑賞したい!!
この展覧会(特に図録!)、まさに坂上先生の研究発表会そのもののよう。図録はとても読み応えのあるものですが、図版の色合いがいけてません。。。これ以上価格が上がるのもどうかとは思いますが、この紙質は・・・(>_<)単体で考えると高いが、入館料が抑えめで無料開館日があることを考慮すると妥当な価格。分厚いし、文字小さいし、トータルで考えるとコストパフォーマンスは高いといえるのではないでしょうか。
ベルト・モリゾの描くドレスは本当に美しい!!どんなに質の高い画集であっても、その繊細さや素晴らしい色彩を再現するのは厳しいのではないでしょうか。実際に作品と向き合ったときにしか伝わらない、本物の凄み。一通り鑑賞した後で、ヴェロネーゼの模写をもう一度鑑賞されることをお勧めします。初期の手堅いものから、様々な実験的試みを経て、独自のスタイルを確立。4月に鑑賞したモネの回顧展のよう。キッチリカッチリしたものじゃ物足りなかったんだろうなぁ。。。
風景のモネ、人物のルノワール、室内のドガ・・・一見、バラバラのようにも思えますが、モリゾというレンズを通してみると見事なまでにうまく繋がります♪お互いに影響しあい、自らの作品世界にうまく取り入れていった様子がひしひしと伝わってきて、モリゾを知ることで他の画家たちについて、しいては印象派というものについて、より理解が深まるように感じました。ジュリーちゃんの成長記録も必見!!可愛いですよ~(≧▽≦)b
 

  • 図録:2800円
  • 音声ガイド:

損保ジャパン東郷青児美術館(http://www.sompo-japan.co.jp/museum/

チラシです。(参考までに)

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