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フィラデルフィア美術館展 [07展覧会感想]

上野の東京都美術館で開催されている『フィラデルフィア美術館展~印象派と20世紀の美術~』を観に行きました。この展覧会は、写実主義から印象主義への変化、20世紀美術の展開、そしてアメリカ大衆文化の中で独自の発展を遂げたモダン・アートまでの近代西洋美術の流れを、美術史上で重要な47作家による珠玉の名作77点で紹介するものだそうです。

~展示構成~
1.写実主義と近代市民生活-1855-1890年 2.印象派とポスト印象派-光から造形へ 3.キュビスムとエコール・ド・パリ-20世紀美術の展開 4.シュルレアリスムと夢-不可視の風景 5.アメリカ美術-大衆と個のイメージ

ジャン=バティスト=カミーユ・コロー《テルニの山羊飼い》最初の展示はジャン=バティスト=カミーユ・コロー《泉のそばのジプシー娘》《テルニの山羊飼い》の対照的な2点。《泉のそばの~》はとても綺麗な人物画。背景には風景画の幻想的な感じがそのまま出ている。エドゥアール・マネ《キアサージ号とアラバマ号の海戦》派手さは無いがなかなかインパクトがある。《テルニの~》は幻想的だけど迫力がある。なんかヘンな感想だな。。。(・_・;)沸き立つようなオレンジと逆光のコントラストがポイントかな。図録の解説によると「色彩効果の巨匠であるコローは、山峡の深さと影を表現するために限られた濁色をつかい、それと対照的に日の出の光を黄色やオレンジの絵具を用いて表現した。」とのこと。
エドゥアール・マネ《キアサージ号とアラバマ号の海戦》は迫力があって格好いい!巧みな色使いで海のうねりがとても見応えがある。戦いの重苦しい感じが、空・煙・海の色合いから伝わってくる。マネの描いた海を見るのは初めてかも!!(^_^)/

カミーユ・ピサロは3点。《夏景色、エラニー》は大好きなエラニーシリーズ。ちょっとボヤボヤとしていて物足りなさを感じるが、離れると雲の感じがいい!!《ラクロワ島、ルーアン(霧の印象)》はひたすら点描って感じ。ぼけぼけな感じでなんだこれっって思ったけど、霧の印象というサブタイトルを観て納得。というか、すげー、幻想的で綺麗じゃん!!キャーq(≧∇≦*)(*≧∇≦)pキャータイトルってやっぱり大事だな~ヾ( ̄ー ̄)ゞ《午後の陽光、ポン・ヌフ》は色彩豊かで綺麗な作品。水面は点描。ピサロの描く空は透通ってはいないが綺麗で見応えがある。タイプの違う3点というのもなかなか面白い展示構成かも♪
エドガー・ドガ《室内》エドガー・ドガ《室内》はとても意味深な感じ。二人の間の微妙な空気が伝わってくる。とてもひんやりとした室内に思えた。「・・・この時期に彼がノートに書いた注釈にはヒントがある。『ランプやろうそくなど、夜の効果に取り組むこと。魅力的なのは、かならずしも光の源ではなく、その効果を示すことなのだ。』ランプと暖炉から柔らかに放たれる光は、情景の親密さを作り上げながら、顔が影となっている不和な二人を分け隔ててもいる。」とのこと。いっぱい描き込んでいるのに、以外にも薄塗り。

モネ、ルノワールは見応えあり!!

クロード・モネ《マヌポルト、エトルタ》クロード・モネ《アンティーブの朝》クロード・モネ《マヌポルト、エトルタ》はとても綺麗。険しい断崖とは対照的な穏やかな水面。エメラルドグリーンがいいね~白色のアクセントが効いている。《アンティーブの朝》も明るい色彩で見応えがある。《ル・アーブルの港》は賑やかなような穏やかなような不思議な感じがした。この作品は「水の動きや船、人が明るい午後の日差しの中に描かれている。モネは特定の瞬間を捉えることに野心的だった。ロサンジェルス・カウンティー美術館にある関連する作品は港の同じ景色を描いているが、雨の日でちらちらする水溜りが波止場に点在する。」とのこと。クロード・モネ《睡蓮、日本の橋》その作品もみたい!!つーか、分厚い図録なんだし、参考図版入れてくれたっていいのに・・・(^_^;)《ポプラ並木》はモネ展(国立新美術館)で鑑賞したもの。モネ展のほうが見栄えは良かったかな。。。《睡蓮、日本の橋》は今回とても楽しみにしていたもの。抽象画のようにどろどろというかとろけた感じの晩年の作品。重要なのは輪郭線や対象物ではなく、光。まさに光を表現した(描いた)という感じ♪厚塗りの絵具がとても力強く、生命力を感じさせる。モネの作品5点は年代順にだんだん色が濃くなり派手に色合いに、そして厚塗りになっている。モネの作品を距離を置いて楽しもうとしたら、後ろにはロダンの彫刻が・・・ちょっと邪魔なんですけど。(ロダンごめん!!)

ピエール=オーギュスト・ルノワール《ルグラン嬢の肖像》ピエール=オーギュスト・ルノワールは4点。展覧会の目玉は日本初公開となる最高傑作《大きな浴女》。確かに肌の質感は綺麗だけどあまり好きではない。裸婦はじっくりと鑑賞するのはちょっと恥ずかしいしね!(*^o^*) テレテレ《ルグラン嬢の肖像》は可愛いですね~ヘ(^∇^ヘ)ヘ(^∇^ヘ) ウヒョヒョ透通るような肌と白い服、黒いエプロン。そして、アクセントとなる青いスカーフ!!スカーフの青がとても綺麗でした~(^_^)/ルノワールの描く瞳はとても魅力的ですね!(@_@)ポール・セザンヌ《ジヴェルニーの冬景色》
ポール・セザンヌ《ジヴェルニーの冬景色》は水彩のような油彩。塗り残しがいっぱいですが、これがいい味を出しています。構図といい、色合いといい、セザンヌっぽいと言えばセザンヌっぽいし、セザンヌっぽくないと言えばセザンヌっぽくないかな???でも、色の置き方は確実にセザンヌ!!「この作品にはセザンヌの絵の組み立て方が顕著に表れている。灰色の絵具の細かいタッチを重ねて、彼は木と果樹園の壁と近隣の建物の屋根の輪郭を描いている。淡い色の斑点は地面と家々に薄く塗られ、あたりにはカンヴァスの地が残る。セザンヌは明るい色の下地塗りでカンヴァスに輝かしさをもたせ、徐々に暗い色を重ねていくことを意識した。その未完成な状態でさえ、作品は有機的な魅力を発揮している。」とのこと。どうやら私は塗り残しいっぱいの作品にとても惹かれるようです♪(^_^)

ん~、やっぱりキュビスムは難しい・・・(^_^;)

パブロ・ピカソ《ヴァイオリンを持つ男》はまさにキュビスムって感じの作品。部分的には認識可能なものもありますが、描かれているもの全てを個別に認識するのは無理!!(笑)でも、全体として彫刻のような立体感や存在感は伝わってきました。そこそこ作品も大きいですし。《三人の音楽師》は後期キュビスムの集大成だそうだ。ピカソの作品としては珍しく!?可愛い♪しかもでかいし。もうね~作品を見た瞬間に笑っちゃいました!(^_^)三人の顔がメチャメチャいいです!!キュビスムだけどバラバラではなく、しっかりと識別できます。カラフルだけどまとまりのある色の組み合わせもいいですね~(^_^)/しかし、解説には「この妙な三人組は、当時没した詩人ギョーム・アポリネールを記念して描かれたと解釈されてきた。すなわちピエロに扮したアポリネールと、修道士に扮した詩人マックス・ジャンコブと、初期の作品で自分自身を投影したヴァイオリンを持つ悲しいアルルカンのピカソ自身である。」とのこと。アンティークのブリキのおもちゃを連想してしまったが・・・(・_・;)
アルベール・グレーズ《バルコニーの男(モリノー博士の肖像)》はどでかいキュビスムの作品。アルベール・グレーズというと国立西洋美術館の常設展示室で観た《収穫物の脱穀》という作品の印象がとても強い。やはり、でかいキュビスム作品で、初見で度肝を抜かれましたー!!あの作品はかなりゴチャゴチャした感じですが、今回の作品は、一応、肖像画ということで、それなりにすっきり感がある。なんとか識別可能ですし。(^_^;)

大本命!! これさえ観れればあとの作品はどうでも・・・

ドレス今回とても楽しみにしていたのが、チラシにもあるアンリ・マティス《青いドレスの女》です。04年に国立西洋美術館で開催された大規模な回顧展ですら貸し出してもらえなかったもの。「・・・同年(※1937年)の作品の中ではこの《青いドレスの女》が最高の出来栄えだと語っているが、実際、赤、黄、青、黒、白の5色で描ききったシンプルな構図は見事としかいいようがない。しかし完成に到るまでの3ヵ月間は試行錯誤の連続だったようである。」とのこと。シンプルな構図はもちろん色の組み合わせが素晴らしい。その素晴らしさを際立たせているのが。この線は描いたものではなく引っ掻いたものです。子供の頃にクレヨンで塗った上から固いもので引っ掻いて下地を線に見立てて遊んでいたあれです。掻き落とし(grattage)というそうで、「1908年以降、マティスはまた画面の表面を絵筆の柄で引掻くような行為もしばしば行っている。・・・こうした掻き落としの線は、1910年代から20年代にかけて見られた後、とくに30年代以降は制作プロセスの変化とともにその性格を変える。主に30年代以降、掻き落としの線は、この時期の特徴である平面塗りの均質な色面の上に施され、地塗りの白などを露出させて彩色の平面性を強調するひじょうに装飾的な文様として、あるいはネガティヴな輪郭線としても用いられる・・・こうした手法は1910年代の油彩における掻き落としの線とは対照的に、平塗りの色面を際立たせ、むしろ明確な効果をもたらす画面表面の最終的な処理として、行為の1回性を特徴としている。(04 マティス展 図録より)」とのこと。この線はいいですよ~細部までじっくりと堪能してきました~♪O(≧∇≦)O イエイ!!オープニングセレモニーでは今展のイメージキャラクターを務める檀れいさんが現代風にアレンジしたこのドレスを着用したそうで、会場入り口付近にそのドレスが展示されていました。ちなみに図録の表紙もこの作品です。表紙につられて買った!?(^_^;)

ワシリー・カンディンスキー《円の中の円》はカンディンスキーが初めて円の主題を前面に持ってきた作品だそうで、黒くて太い輪郭の円の中に、26個の円が所々重なり合いながら描かれているとのこと。へぇ~って感じです(笑)会場で数えた人はいるのかなぁ。(※私は数えていません)「・・・円とは、すべての形の基本であり、象徴的・宇宙的な意味をもっていた。・・・『円とは、相反する様々な形がバランスよく一つに結合したものだ。』」とのこと。ここの展示室は壁の色が赤でしたが、赤の圧迫感に負けているようで萎縮しているように感じました。個人的にはこの作品の周りだけ青にして良かったなぁ。。。ジョアン・ミロ《月に吠える犬》はヘンテコな犬だけど可愛い。パウル・クレー《魚の魔術》もおさかなニャ~ンって感じで可愛かったです♪ヾ( ̄ー ̄)ゞ

ワンフロアまるまるアメリカ~ンってのはチョット厳しいかも・・・

ダニエル・ガーバー《室内、朝の光》は室内に差し込む光、それがもたらすコントラストは印象派のようで見応えがありました。解説によると、やはり印象派の影響を受けていたようですね。描かれているのは長女だそうですが、メインは光。朝の光が差し込む様子の描写。この作品けっこう好きです♪
ジョージア・オキーフ《ピンクの地の上の2本のカラ・リリー》はうっとりするような綺麗な作品。薄い緑のグラデーションが白色や黄色を引き立てている。滑らかでしっとりした感じが伝わってくる、この展覧会の目玉の一つ。このアメリカコーナーは良く言えばワイルドで豪快、悪く言えばがさつで大雑把なものばかり。そのため、この作品の持つ繊細さが際立っていました♪
ドロテア・タニング《誕生日》は、おっ、綺麗なお姉さんと思ったら、よくよく観てみるとなんか凄いことになってる・・・Σ(ヾ ̄▽ ̄)ヾ!!ざっくり作品を観た後で画家や作品名をチェックすると・・・ド、ドロテア・タニング・・・w(°o°)w おおっ!!3月に鑑賞したシュルレアリスム展(埼玉県立近代美術館)で神がかったピアノ演奏の作品のあの画家じゃないですかーーー!!!アメリカの人だったんだ・・・ところで、この作品の扉、どこまで続いてるんだ???《誕生日》というタイトルは後に夫となるマックス・エルンストがつけたものだそうです。

この会場としては珍しく!?ゆったり展示。特に毎回大混雑を引き起こす最初の展示室は作品数も少なめですっきりとした感じがしました。開催3日目ということもあり、混雑というほどの人ではなく、自分のペースでのんびりゆったりと鑑賞できました♪モネやルノワールは質の高い素晴らしいものが揃っていて、展示場所や展示構成の影響もありここが一番混雑していたように思います。ここは次に行く時は大混雑必至かな。。。(^_^;)印象派の作品は期待通り充実していましたが、やはり今回はマティスが一番良かったかな~O(≧∇≦)O イエイ!!ジョージア・オキーフの妖しい魅力の余韻に浸りながら会場を後にするのも悪くないかも。各展示室に目玉となる作品が配置され上手くまとまった感じがしましたが、ちょっと作品数が少なくて物足りなさを感じました。この会場でじっくりと鑑賞するにはこれくらいの作品数の方がいいのかな。えっ、混雑してきたらこれでも厳しい!?(・_・;)ちなみに、グッズショップには印象派若き日のモネと巨匠たちDVD-BOX が並んでいました♪(^_^)/ 

  • 図録:2500円
  • 音声ガイド:500円

東京都美術館(http://www.tobikan.jp/

公式サイト(http://www.phila2007.jp/)※作品リスト&図録の通販あり

 

チラシです。(参考までに)

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