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桜さくらサクラ・2009 [09展覧会感想]

山種美術館で開催されていた「桜さくらサクラ・2009-さようなら千鳥ヶ淵-」を観に行きました。
「 万葉の時代には大陸文化の影響から花といえば梅を指しましたが、国風文化が花開いた平安時代以降は桜を指すようになりました。そもそも桜は太古の昔から日本各地に自生していた樹木で、日本人には馴染み深いものでした。いつしか貴族の邸宅や寺社の庭、または里山に植えられ、江戸時代には貴賎、老若男女問わず身近に花見を楽しむようになってきます。絢爛と咲き、潔く散る…その華麗さ儚さゆえに魔力も秘めていると感じさせます。そして日本人を魅了してやまない桜は、多くの絵画に描かれてきました。「さまざまの事 おもひ出す 桜かな」と芭蕉が詠ったように、多くの人の様々な想いとともに、桜は今でも、そしてこれからも日本人に愛され続けていくことでしょう。
 当館が桜の名所である千鳥ヶ淵の隣に仮移転してから11年目となり、千鳥ヶ淵に因んで桜をテーマにした展覧会は、皆様にすっかり馴染み深いものとなりました。しかし、本年10月の広尾への当館本移転にともない、多くの方々に愛された「桜さくらサクラ展」も残念ながら最終回になります。最後に相応しく、リクエストの多い桜を描いた作品・約50点を展示します。本展で華やかに咲き競う桜の花々を満喫していただければ幸いです。(チラシより)」


桜さくらサクラ01 桜さくらサクラ02
 
最初の作品はチラシの表下段にある石田武《千鳥ヶ淵》。ちょっと湿気のある緑がとても綺麗。この緑の使い方は東山魁夷《緑響く》(長野県信濃美術館 東山魁夷館蔵)《青響》(東京国立近代美術館蔵)のような幻想的な雰囲気に通じるものを感じた。朝もやが立ち込める中、朝日が差し込む様子を描いたものだろうか。桜の枝の間から差し込む光を金色でサッとさりげなく斜めに入れているところなんてなかなかにくいね~(^_^)オーロラのようなカーテンのドレープのような、それでいて、金色にもかかわらず強烈な自己主張はせずに、満開の桜を見事に引き立てている。綺麗な桜に目を奪われてしまうが、水面の波紋もとても見応えがある。とても静かで落ち着きがあり、時間を忘れて眺めていたくなる。まさにこの場所でこの展覧会を開催するために描かれたかのような作品。

橋本明治《朝日桜》加山又造《夜桜》は派手派手な桜。どど~んって感じ。なんか凄い存在感。思わず後ずさり・・・(^_^;)
奥村土牛の2点も存在感では全く負けていない。最初の展示室の奥の壁は、左に《醍醐》、右に《吉野》。色合いは優しいけど、かなり派手。(^_^;)2周り目のときにふと思った。《醍醐》の構図ってかなり特殊。奥村土牛は桜の花や枝ぶりというより、この老木の立派な幹が描きたかったのかもしれないと。そう考えたとき、右側の支柱が杖に見え、元気な年寄りが「まだまだ若いもんには負けん!」と言っているようにも。ちなみに、昨年の百寿を超えて展ではチラシの表を飾っていた。
「百寿を超えて-奥村土牛・小倉遊亀・片岡球子-」
 感想記事(http://ryuu.blog.so-net.ne.jp/2008-11-05

最初の展示室は全部で10点、とても見応えのある気合の入った内容。上記の他とても印象深く素晴らしかった作品は小林古径《清姫のうち 入相桜》渡辺省亭《桜に雀》川崎小虎《山桜に雀》の3点。最初の展示室のガラスケースの中のものでは、国井応文《京洛四季 画帳》菊池芳文《花鳥十二ヶ月》堂本印象《桜》の3点が見応えのあるものだった。

展示順からすると、柱のところにある橋本明治《桜(スケッチ)》を経て隣の展示室へ移動となるのだが、展示室の反対側、壁の作品に目を奪われた。
本当は、展示室を3つまわってから壁に沿って鑑賞し出入り口、となるのだろう。
つまり、今展の最後を飾る作品群。あまりにも魅力的だったので、先にそっちを鑑賞してしまった。

特に出入り口横の奥田元宋《湖畔春耀》はとても見応えのある素晴らしい作品だった。本当はこの作品で〆なんだろうな~でも先に観ちゃったよ・・・(^_^;)ははは
青森県の十和田湖奥入瀬を描いた作品。たぶん夕方。夕焼けか、赤い新芽か、全体的に木々が赤く、紅葉のような感じでもある。水辺でしだれた感じのピンク色が桜だろう。キラキラした水面、そこに映り込む木々。近くで見るとちょっとボケボケした感じで幻想的。これが距離を置いてみると、せり出してくるような迫力に様変わり。もの凄い存在感!この存在感が、展示室を移動する際にどうしても気になった理由。もちろん、展示順にラストにも、そして二周り目のラストにもじっくりと鑑賞。
石田武《吉野》《春宵》は満開の桜がとても綺麗な見応えのある作品。《吉野》は山の斜面を埋め尽くす満開の桜を描いたもの。桜の間からにょきにょきと杉か何かのてっぺんが出ている。緑色のとんがり帽子、なんか可愛い♪(^_^)遠景も含め全体的に霞んだ感じでふわふわとしているが、この緑色がアクセントとなり桜の柔らかい色合いをうまく引き立てている。《春宵》は大きな夜桜一本。満開の枝垂桜。上のほうにうっすらと金色。とても静かで見応えがある。まさに、心静かに桜を見るといった感じ。
千住博《夜桜》も満開の夜桜。こちらも枝垂れかな、おばけ桜にしか見えないけど。(^_^;)決して悪い作品ではないのだが、加山又造速水御舟石田武といったとても見応えのある夜桜の前ではインパクトが弱く霞んでしまう。。。

二番目の展示室、最初の作品は小茂田青樹《春庭》。全体的にぼんやりとした柔らかい感じの作品。タイトルには庭とあるが、公園の散歩道みたい。描かれているのは雨上がりだろうか。両端の木々に湿気を感じる。地面にはたくさんの桜の花びら。一応、桜吹雪も。明るい色彩の中にちょこっとだけ覗く散り際の桜が持つ独特のはかなさ、けっこう好き。速水御舟《あけぼの・春の宵のうち 春の宵》こちらは夜桜の桜吹雪。綺麗ではあるが、寂しいというか切ないというか・・・もう儚いとかいうレベルではない。なんかお化けが出てきそう。。。(>_<)

一番奥の展示室では、チラシの裏左下にある菱田春草《桜下美人図》がとても印象深かった。桜の木の下に佇む綺麗なお姉さん4人。お話中。おばちゃんたちの井戸端会議とは格が違う。とっても優雅でお上品な感じ。(=^^=) オホホホホ♪この展覧会、人物が描かれたものはわずか、それだけに一際輝いてみえた。(^_^)小野竹喬《春野秋渓のうち 春野》《春野秋渓》右隻だそうだ。柔らかい色彩ではあるが、艶やか~って感じ。とても綺麗。左隻も気になる・・・

この千鳥ヶ淵という場所に因んで開催されてきた「桜さくらサクラ展」も残念ながら今展が最終回だそうだ。広尾移転後の来春は、すでに別の企画展の開催が決まっている。ただし、移転先には常設展示室と企画展示室があるそうなので、来春もいくつかの作品は鑑賞できるかもしれない。でもやっぱり、「桜さくらサクラ展」を開催してほしいなぁ。(T_T)最終回ということで今展はとても気合の入った豪華な作品群。とても見応えのある展覧会で、予定していた以上に時間をかけてじっくりと鑑賞。桜って、どうして、こんなにも、日本人の心を魅了するのだろう?四季を表すものの中でも象徴的な存在だからかな?日本人に生まれて良かった~ってあらためて思った。(^_^)地球温暖化がすすんで日本が熱帯化したら、もしかすると雨季と乾季だけになってしまうのだろうか。そうしたら桜は枯れて無くなっちゃうかも。これは大変だ・・・(>_<)


山種美術館


山種美術館(http://www.yamatane-museum.or.jp/

山種美術館01 山種美術館02

千鳥ヶ淵の桜が咲いている時期に鑑賞しようかとも思ったが、混雑していそうだったので時期をずらすことにした。ちょうど4月のはじめに上野のルーヴル美術館展と上野公園の桜を鑑賞したので、なんとなく今回は乃木坂のルーヴル美術館展とこの桜の展覧会を組み合わせてみることにした。とくに深い意味はないけど。
~おでかけ記録~
ルーヴル×阿修羅×お花見=上野公園(http://ryuu.blog.so-net.ne.jp/2009-04-07
ルーヴル美術館展&桜さくらサクラ展(http://ryuu.blog.so-net.ne.jp/2009-05-06


皇居のお堀01
(08年9月下旬)

見事なまでの緑色・・・(>_<)
石田武《千鳥ヶ淵》は写実的ではあるが、写実として緑色で描いたわけではないと思われます。印象として、その雰囲気を伝えたくて、緑色を用いたのではないでしょうか。いや、そう願いたい。ちなみにこの作品が描かれたのは2005年。さて、これをどう解釈すべきか。。( ̄-  ̄ ) うーん

皇居のお堀02
(09年5月上旬)

まだ、お堀の水はそれほど緑色ではありません。
(まぁ、緑っていえば緑なんすけどね。。。緑の質が違うということで。)
遠くに見えるのは腹黒い人がいっぱい集まる建物。
欲望が渦巻いているせいか、見事に霞んでいます。。。(* ̄m ̄) ププッ
あそこはいつでもとっても澱んで濁ってますねぇ。
はっ、だからお堀の水までも・・・Σ(ヾ ̄▽ ̄)ヾ!!
やはり定期的に(不定期でもいいから)浄化が必要でしょう。(≧∇≦)/ ハハハ


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コメント 13

kumimin

桜のシーズンに行きましたが混んでなかったですよ♪
私は着物の柄のような石田武「千鳥ヶ淵」がやっぱり好きです♡
あれ1枚見ててもいいかなと思いましたよ=^^=
by kumimin (2009-08-22 00:49) 

kuwachan

桜、年齢を重ねるほどに(^^ゞ惹きつけられていきます。
1週間ほどで散ってしまう儚さがいいのかなぁ・・・
桜がない日本の春なんて考えられません!
by kuwachan (2009-08-22 10:23) 

miyoko

桜いいですね♪
いろいろ見てみたいです~
小林古径《清姫のうち 入相桜》
奥村土牛の桜、特にみてみたいです ^^
by miyoko (2009-08-22 12:15) 

ぽんこ

りゅうさんってホント幅が広~くて
奥が深~いですよね。
by ぽんこ (2009-08-22 13:11) 

TaekoLovesParis

私も行った展覧会だけど、こうやって時間がたってから、りゅうさんの記事を読むと、覚えてるのものと記憶になくなったものとが、はっきりします。
千住博さん、ふすま絵など大作では人気がありますが、こういうサイズだと
私もインパクト不足を感じました。
小茂田青樹の「春庭」は、こんな小径を実際にあるいてみたいと思える景色。すてきな場所と思いました。
「醍醐」へのりゅうさんの考察、<元気な年寄りが、、>が、なんかほほえましかったです。言われてみれば、そうも見えますね。
お堀の水の色は私にも緑色のイメージ。石田武の桜の絵の水が緑色では、う~ん。。。やはり絵の世界は美の追求ですね。
by TaekoLovesParis (2009-08-22 16:41) 

りゅう

○kumiminさん、nice!&コメントありがとうございます(^o^)丿
桜さくらサクラ生桜、おなかいっぱい胸いっぱい♪ヾ( ̄ー ̄)ゞ
石田武「千鳥ヶ淵」素敵でしたね。私も好きです♪
確かに着物の柄のよう。
はっ!!だから、次の松園に惹かれたのか~~~!Σ(ヾ ̄▽ ̄)ヾ!!
今展は、石田武、奥田元宋が特に印象的でした。

○kuwachanさん、nice!&コメントありがとうございます(^o^)丿
やっぱり、桜っていいですね~
淡い色合いとごくごく限られた時間。
儚さゆえに心惹かれるのかもしれませんね。ヾ( ̄ー ̄)ゞ
桜さくらサクラ展は今回がラスト、とても名残惜しいです。

○miyokoさん、nice!&コメントありがとうございます(^o^)丿
展示数は50点程でしたが、とても見応えのある絢爛豪華な展覧会でした。
来春の山種美術館は、奥村土牛展を予定しているそうです。
今回展示されていた2点も展示されるのではないでしょうか。

○ぽんこさん、nice!&コメントありがとうございます(^o^)丿
乃木坂のルーヴルよりもこっちの方が良かったです!
桜の絵を見た後に聴くバッハ、ヴァイオリンの音色。最高!!(^_^)

○TaekoLovesParisさん、nice!&コメントありがとうございます(^o^)丿
もうすぐ夏も終わるというのに、今頃、桜の感想です。。。(^_^;)
勢いに任せ、ガガ~って書いてバッ!ってアップしたので、いつも以上に支離滅裂な記事となりました・・・(/ー\*) イヤン♪
石田武「千鳥ヶ淵」の緑は、はカミーユ・コローの想い出シリーズのような心象風景なのかもしれませんね。
綺麗な緑色でとても見応えありました。(^_^)

○mamiさん、nice!ありがとうございます(^o^)丿

○りんこうさん、nice!ありがとうございます(^o^)丿
by りゅう (2009-08-23 12:31) 

雅

大丈夫です。亜熱帯の沖縄でも咲く桜はありますから。
でも桜の見頃は1月ですけどね(笑)
by (2009-08-23 12:32) 

りゅう

○雅さん、nice!&コメントありがとうございます(^o^)丿
見頃が1月・・・四季が・・・崩れていく・・・・・・(>_<)
ちなみに上野公園でも2月に寒桜が咲きます。。。
http://ryuu.blog.so-net.ne.jp/2007-02-11
旧暦だと春だからいいのかな。。。なんかビミョーーーーー・・・
空さんから暗示のかけかた教わらなきゃ。。。(^_^;)ははは
by りゅう (2009-08-23 12:47) 

りゅう

○翠川与志木さん、nice!ありがとうございます(^o^)丿
by りゅう (2009-08-24 20:03) 

りゅう

○pistacciさん、nice!ありがとうございます(^o^)丿
by りゅう (2009-08-26 23:19) 

laysy

桜って淡い色が良いんですよね〜やっぱり綺麗〜
桜の季節は遥か彼方に…と思うけれど、
あっという間に半年経ってしまったから、
気づいたら桜の季節〜なんてことになりそう。
by laysy (2009-08-27 08:02) 

りゅう

○laysyさん、nice!&コメントありがとうございます(^o^)丿
桜の淡い色合いと散り際は、美しくもあり、儚くもあり、
人の心を、画家を、強く惹き付け刺激するのかもしれませんね。
随分と遅くなってしまいました、もっとも、観に行ったのがGWで桜の季節からは外れていましたが。。。(^_^;)

○ミカチさん、nice!ありがとうございます(^o^)丿
by りゅう (2009-08-29 11:34) 

りゅう

○naonaoさん、nice!ありがとうございます(^o^)丿

○いっぷくさん、nice!ありがとうございます(^o^)丿
by りゅう (2009-08-30 20:27) 

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