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藤田嗣治 「異邦人」の生涯 [アート]

東京国立近代美術館で開催されている藤田嗣治の展覧会を鑑賞するにあたり、
藤田についてあまりにも知識が不足しているので予習をかねて読んだ本です。

藤田嗣治・・・・・凄い。

この一言に尽きます。

藤田嗣治「異邦人」の生涯

藤田嗣治「異邦人」の生涯

  • 作者: 近藤 史人
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2002/11
  • メディア: 単行本

<アマゾンのレヴュー>出版社/著者からの内容紹介
私が日本を捨てたのではない。日本に捨てられたのだ

日本近代美術史最大のタブーに挑む傑作評伝!

華麗な伝説に彩られたエコール・ド・パリの寵児は、帰国後なぜ「戦争画のスター」となったのか? 戦後フランスに帰化し、二度と日本に帰らなかったのはなぜか? 独創的芸術の変遷、苛酷な運命、そして魂の彷徨。未公開資料を駆使して「巨匠の真実」に迫る!

私の体は日本で成長し、私の絵はフランスで成長した。(中略)
今や私は日本とフランスに故郷を持つ国際人になってしまった。私には2カ国ながら懐かしいふるさとだ。私はフランスにどこまでも日本人として完成すべく努力したい。私は世界に日本人として生きたいと願う。それはまた、世界人として日本に生きることにもなるだろうと思う。
―藤田嗣治、40代のことば―

 

パリでは、今も最も有名な日本人画家-
得意としたのは猫と女-
ことにその裸婦は「乳白色の肌」とパリ画壇の絶賛を浴びた-
エコール・ド・パリの代表的画家-

藤田嗣治

 

 

ちょっとだけ、本の内容をご紹介。

 藤田が死去してから三十四年。「自伝」を託された夏堀は二〇〇〇年に亡くなり、今年九十二歳になった婦人の記憶は薄れつつある。
 本書は、婦人がこれだけは語り残したいとの思いをこめた証言や夏堀原稿に書き込んだ「自伝」(以下、「夏堀用手記」と略)、その他の資料をもとに、画家・藤田嗣治の生涯の空白を埋めようとする試みである。(P14)

  藤田はオカッパ頭誕生の由来をこう語っている。
<貧乏時代に床屋に行く金がなく、髪の毛が目のとこまで下がってきて邪魔になる。で、毛を切って前が見えるように窓を開けたわけなのです。また、襟首に延びる髪の毛は手探りで切ったものだが、あるときはエジプトの美しい彫刻を見て三段ぐらいに後ろに段階を付けて切ったこともあります。結局、東洋人の私の髪の毛は真っ黒くて素直なので一番目立つこととなり、フジタはおかっぱでないとフジタでなくなったのです。これは、私自身としては過去の苦学時代を忘れぬ為のしるしでもあるのです>(『巴里の昼と夜』)
 一般には「ケレン味」としてしか受け取られなかったオカッパ頭も、藤田にとっては、強い意志で独自の芸術を模索していた苦学時代を忘れないための大切なものだったのである。(P58~59)

 「今までの日本人画家は、パリに勉強しにきただけだ。俺は、パリで一流と認められるような仕事をしたい」(P59)

 モノトーンの画面を特徴づける黒について、藤田はこう語っている。
<私が指導を受けた黒田清輝先生が黒い絵の具はパレットから除くべく命ぜられていたのが不可解なこととなった。吾等東洋人、日本人が黒色の味わいを熟知している生命ともいうべき黒色を何故油絵に取り入れ得ないのか、黒色こそどしどし日本人の油絵に入れるべきものだろうと決心した>(『腕一本』)
 学生時代、黒田教授への反発から芽生えた黒への思いは、パリで自らの絵を模索するうちに、それを「日本人の生命」と見る画論にまで熟成されていた。
 パリの評論家たちを驚かせたのは流麗な黒の輪郭線であった。その線を藤田は日本画の面相筆を使って描いた。油絵に日本画の技法を持ち込んだことが藤田の独創だった。(P80) 

 

 

読み応え十分。

作品を通して、更に藤田のことを知りたいと思いました。

既に鑑賞された方、これから鑑賞される方、藤田嗣治に興味のある方、

本当におすすめの一冊です。

展覧会のほうは、昨年のゴッホ展を上回るような人出だそうです。

"く(""0"")>なんてこった!!"

 

この本は図書館で借りてきて読んだのですが、
現在は文庫本も出版されているそうです。
それが、こちら。

藤田嗣治「異邦人」の生涯

藤田嗣治「異邦人」の生涯

  • 作者: 近藤 史人
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2006/01
  • メディア: 文庫

 

~展覧会~

『パリを魅了した異邦人 生誕120年 藤田嗣治展』

東京国立近代美術館 2006年3月28日~5月21日
京都国立近代美術館 2006年5月30日~7月23日
広島県立美術館 2006年8月3日~10月9日


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コメント 11

TaekoLovesParis

明日、代休なので同僚とフジタを見に行くんですよ。
予習が出来てありがたいです。
by TaekoLovesParis (2006-04-30 22:50) 

りゅう

>TaekoLovesParisさん、nice!&コメントありがとうございます。(^o^)丿
この本はフジタと交流のあった画家たちやエコール・ド・パリの様子、フジタと戦争などとても興味深い内容が満載でしたが、今回はフジタという画家・画業にポイントをおいてみました。(チョットだけの紹介ですが・・・)
作品のバックグラウンドってなかなか面白いですね!!
鑑賞後にもう一度読みたいと思います。
by りゅう (2006-05-02 00:16) 

mine

藤田嗣治は私も大好きです。
絵を見ると感動します。その目線、その先にある対象の解釈と愛情。
素晴らしい作家です。
by mine (2006-05-02 15:02) 

りゅう

>mineさん、コメントありがとうございます(^o^)丿
藤田嗣治の作品いいですよね!!
でも、藤田嗣治について知らないことばかりでした・・・
この本(美化しすぎの節がありますが)のおかげで、鑑賞が一層楽しくなりそうです。
展覧会がとても楽しみです キャーq(≧∇≦*)(*≧∇≦)pキャー
by りゅう (2006-05-02 19:00) 

mikachan

興味深い本です。読んでみたい気がする。
画家の生涯を知るのは面白いですね。
そうですか、東京で藤田嗣治展やってるんですね。見たいわ~。
by mikachan (2006-05-04 15:47) 

りゅう

>ミカチさん、nice!&コメントありがとうございます(^o^)丿
藤田嗣治・・・凄いです!!
時代に翻弄された壮絶な人生、何故かつきまとう「戦争の影」・・・
機会があれば是非。
藤田嗣治展、もの凄い人気だそうです。
現在、上野でプラド美術館展が開催され、入場制限がかかるような混雑ぶりなのですが、この藤田の展覧会はさらにその上をいくそうです。ププッ ( ̄m ̄*)
招待券があるのでチケット売り場に並ばずに済むのが幸いですが、
覚悟して鑑賞してきます。(=^_^=) ヘヘヘ
by りゅう (2006-05-04 22:16) 

りんこう

本日、「藤田嗣治展」行って参りました。
木曜も夜8時まで開館との情報をりゅうさんのブログから得ていたので…。
金、土、日よりは空いているかと…。が、結構混んでいました…。
僕は戦後の子供たちを題材にした絵が好きです。
何にも縛られず自由に描いている藤田がいる気がします。
りゅうさんご紹介の本は読むつもりです。
by りんこう (2006-05-18 22:49) 

foret

りゅうさん、はじめまして。

藤田嗣治、僕も大好きです。
パリで初めてその絵を見たときにすごく惹かれました。
自叙伝のようなものも読みましたが、ほんとにすごい人ですよね。
展覧会が関西に巡回してくるのを楽しみにしています。
by foret (2006-05-19 04:23) 

りゅう

>りんこうさん、nice!&コメントありがとうございます(^o^)丿
ふむふむ、りんこうさんは子供たちの絵ですか。オイラはニャンコかな。
でも本当に好きなのはアノ細い線なんですヾ( ̄ー ̄)ゞ
この本を読み、フジタに対する見方が変わりました!!機会があればゼヒ。

>foretさん、はじめまして。
藤田嗣治、ほんとに凄いです!!
この展覧会は、フジタの作品をまとめて鑑賞できるとても貴重な機会ですよね。
素晴らしい作品が揃っていて、充実した時間が過ごせました♪
(早く、感想記事を書かなくては・・・(^_^;))
by りゅう (2006-05-19 21:59) 

藤田展・・・行きたかったんですが、行けずじまいでした。
このまえNHKの迷宮美術館でも取り上げられていました(^^)
『日本人が無理矢理洋画を描いた感』が全然しないので、私は黒田清輝よりも好きだったりします。
ギャラリーフェイクという漫画があるのですが、その主人公の名前が『藤田』で、
藤田嗣治から取ったらしいです。
美術漫画ですが、面白いのでオススメですよ!
by (2006-05-23 15:07) 

りゅう

>秋空さん、nice!&コメントありがとうございます(^o^)丿
ブリヂストン美術館の《インク壷の静物》や東京国立近代美術館の所蔵作品展で観たことのあるものがいくつもありました。巡回し終えれば、また、元の場所で観れますし。(そのほうがノンビリとジックリ鑑賞できます!!)
早く感想記事を書かなくては・・・(^_^;)
「ギャラリーフェイク」ですね、ありがとうございます、早速、探してみます!!
by りゅう (2006-05-24 01:18) 

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