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キリシタン関係の遺品 イエズス会の布教と禁制下の信仰 [13展覧会感想]

『キリシタン関係の遺品 イエズス会の布教と禁制下の信仰 』

 東京国立博物館(http://www.tnm.jp/

 本館16室 2013年3月19日~5月6日
 (http://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=1598

「ルターが宗教改革を推し進めていた1534年、スペインのバスク地方出身のイグナティウス・デ・ロヨラは、カトリックの中の改革派としてフランシスコ・ザビエルら6人の同志を集めてイエズス会を創立し、活動を始めました。イエズス会はポルトガル国王の支援を受けてヨーロッパ以外の地にカトリックを広めることでプロテスタントに対抗します。ザビエルが日本に来たのは1549年。こののち、日本には宣教師が次々に訪れ、キリスト教の信徒を増やしました。最盛期には40万人に達したといいます。キリスト教が禁止される17世紀初期までは西洋の情報・文化が日本に達し、逆に日本の様子が西洋に伝えられました。日本と西洋がつながったのです。
しかし江戸幕府がキリスト教を禁止し、追放そして厳しい弾圧によって改宗を迫ると信徒はいなくなったはずでした。ところが、長崎の一部の地域に潜伏して信仰を守り続けた人々がいました。カクレキリシタンです。彼らは組織をつくって結束し、仏教寺院の檀家を装い、仏壇の奥にマリア観音像を置き、踏み絵を踏んで帰ってから懺悔(ざんげ)のオラショ(祈祷(きとう)文)をとなえました。ここに展示した遺物のほとんどはこうしたキリシタンの人々が所持していたものです。
明治政府も禁制を続けましたが、欧米諸国の強い批判を受けて明治6年(1873)信仰の自由を認めました。(東京国立博物館HPより)」

 
《聖母子像》 ヨーロッパ 長崎奉行所旧蔵品 16~17世紀 【重要文化財】
【右】 《聖母子像》 ヨーロッパ 長崎奉行所旧蔵品 16~17世紀 【重要文化財】
「片腕にキリストを抱いた聖母子像はイコン(聖画)に描かれる聖母像でもっともポピュラーな構図(ホデゲトリア)である。原図はローマのサンタ・マリア・マジョーレ聖堂の聖母子像だとされる。かすかに残るキリストの手の形に最も古い表現が認められる。(作品解説より)」
【左】 《聖母子像》 ヨーロッパ 長崎奉行所旧蔵品 16~17世紀 【重要文化財】
「聖母像を崇拝するカトリックでは、母と子の情愛などをテーマとする聖母図をつくり、その信仰をを民衆に訴えた。この図には人間的な優しさと親しみがよく表現されている。イエズス会の宣教師がヨーロッパからもたらしたものだろう。(作品解説より)」

天正遣欧使節記 イタリア・レッジオ刊 1585年 【重要文化財】
天正遣欧使節記 イタリア・レッジオ刊 1585年 【重要文化財】

銅牌(無原罪の聖母) 長崎奉行所旧蔵品 安土桃山~江戸時代 16~17世紀 【重要文化財】
銅牌(無原罪の聖母) 長崎奉行所旧蔵品 安土桃山~江戸時代 16~17世紀 【重要文化財】

聖母子図 トマ・ド・ルー 版刻・刊行 フランス、パリ 福井にて発見 16~17世紀
聖母子図 トマ・ド・ルー 版刻・刊行 フランス、パリ 福井にて発見 16~17世紀

キリシタン関係の遺品 イエズス会の布教と禁制下の信仰01


本日のお目当てはこちら。
《聖母像(親指のマリア)》 イタリア 長崎奉行所旧蔵品 宝永5年(1708)シドッチ携行品 【重要文化財】
《聖母像(親指のマリア)》 イタリア 長崎奉行所旧蔵品
宝永5年(1708)シドッチ携行品 【重要文化財】

「キリスト教禁制下にイタリア人宣教師シドッチ(1667~1714)が携行した作品。青は中世においてキリストの死を嘆く聖母の悲しみの色とされた。シドッチは宝永5年(1708)に屋久島で捕らえられ、新井白石が取り調べた。遺品の中でも特に美しいマリアである。(作品解説より)」

新井白石著 『西洋紀聞』
新井白石著 『西洋紀聞』

杞憂道人筆 『切支丹の事 』
杞憂道人筆 『切支丹の事 』

西洋紀聞 (東洋文庫 (113))

西洋紀聞 (東洋文庫 (113))

  • 作者: 新井 白石
  • 出版社/メーカー: 平凡社
  • 発売日: 1968/04
  • メディア: 文庫

西洋紀聞 (東洋文庫)

西洋紀聞 (東洋文庫)

  • 作者: 新井白石
  • 出版社/メーカー: 平凡社
  • メディア: オンデマンド (ペーパーバック)

キリシタン関連の展示は2,3年ごとに行われている。
《親指のマリア》との再会は10年ぶりくらいになる。
今回の展示に先立ち、西洋紀聞も頑張って読んだ。



「新井白石とシドッチ神父-ふたりの魂の出会いなくして、近代の幕は開けなかった。最後の潜入宣教師シドッチが所持していた聖母画像「親指のマリア」と「大世界地図」をシンボルに、「西洋紀聞」の背後の闇に光を当てる、著者渾身の長編小説。 」

親指のマリア

親指のマリア

  • 作者: 秦 恒平
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 1990/12
  • メディア: 単行本


そもそも、今回、キリシタン関連の展示を見たいと思ったきっかけはこの長編小説。
数年前に図書館のリサイクルフェアで戴いてきたもの。(表紙の《親指のマリア》に釘付けになった。)
読まずにそのまま放置していたが、昨年なんとなく読もうという気になって読んでみた。
小説なので史実をベースとしつつもかなり創り込まれているがとても興味深いものだった。
そして久しぶりに《親指のマリア》を見たくなった。
また、この本をきっかけに新井白石とシドッチについても興味を持ち、いくつか読んでみた。
その中に上記の西洋紀聞も含まれている。
どのあたりが脚色された部分なのか、実際はどうなのか、気になる部分が多々あったので。
そのあたりについては後ほどあらためて。

キリシタン関係の遺品 イエズス会の布教と禁制下の信仰02

とんぼの本 こんなに面白い東京国立博物館

とんぼの本 こんなに面白い東京国立博物館

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2005/04/21
  • メディア: 単行本

「旧彫刻室の収蔵品総数の四割強を占めていたキリシタン関係遺品がなぜ彫刻の蔵に収められてたのか不思議な話。もともとこの遺品は長崎奉行所が信徒たちから没収したものが中心となっている。維新後、長崎県に引き継がれて県の倉庫に眠っていたが、明治七年、あるフランス人が、価格は問わないから踏絵を買い取りたいと申し出てやにわに動き出し、処置に困った県が一括して当時の教部省に引き取ってもらった。それが官制改革で内務省社寺局の所管になり、さらに明治十二年、同省博物局の希望で博物館に移された。ただし踏絵については、『往時残忍之所業ヲ追想セシムルニ足リ』、外交上の問題もあるので陳列を差し控えるようにという条件付だった。確かに、信徒判別のための板踏絵(礼拝の対象であった銅牌を厚手の板にはめこみ踏絵としたもの)や真鍮踏絵を見ると、当時の迫害の歴史が生々しく蘇ってくる。他にマリア観音、ロザリオ、十字架、祈祷書などさまざまな資料が残されているが、一括して収蔵されたせいで、なかには明治以前に日本にもちこまれたふるい西洋の油絵までもが、彫刻室に収まってしまった。江戸時代最後の潜入伴天連(バテレン)として屋久島で捕らえられた宣教師シドッチの携行品で、イタリアの画家カルロ・ドルチ(一六一六~八六)作といわれる聖母図(通称『親指のマリア』)である。(P128)」

板踏絵 キリスト像 (ピエタ) 長崎奉行所旧蔵品 江戸時代・17世紀 【重要文化財】
板踏絵 キリスト像 (ピエタ) 長崎奉行所旧蔵品 江戸時代・17世紀 【重要文化財】

板踏絵 聖母子像(ロザリオの聖母) 長崎奉行所旧蔵品 江戸時代・17世紀 【重要文化財】
板踏絵 聖母子像(ロザリオの聖母) 長崎奉行所旧蔵品 江戸時代・17世紀 【重要文化財】

キリシタン関係の遺品 イエズス会の布教と禁制下の信仰03


萩原祐佐作 真鍮踏絵 聖母子像(ロザリオの聖母) 長崎奉行所旧蔵品 江戸時代・寛文9年(1669) 【重要文化財】
萩原祐佐作 真鍮踏絵 聖母子像(ロザリオの聖母) 長崎奉行所旧蔵品 江戸時代・寛文9年(1669) 【重要文化財】

キリシタン関係の遺品 イエズス会の布教と禁制下の信仰04


日本誌 モンタヌス著、アムステルダム刊 1669年
日本誌 モンタヌス著、アムステルダム刊 1669年

ロザリオ ヨーロッパ 長崎奉行所旧蔵品(浦上にて収納) 19世紀 【重要文化財】
ロザリオ ヨーロッパ 長崎奉行所旧蔵品(浦上にて収納) 19世紀 【重要文化財】

ロザリオの奥に小さく写っているのはメダイ。
小さくて上手く撮れなかったので、写真は無し。


キリシタン関係の遺品 イエズス会の布教と禁制下の信仰05

《マリア観音像》 徳化窯 中国 長崎奉行所旧蔵品(安政3年浦上にて収納) 【重要文化財】 《マリア観音像》 徳化窯 中国 長崎奉行所旧蔵品(安政3年浦上にて収納) 【重要文化財】
《マリア観音像》 徳化窯 中国 長崎奉行所旧蔵品(安政3年浦上にて収納) 【重要文化財】


先日のおでかけ記録にあるように、この日は聖母マリアをテーマに上野の美術館をハシゴした。
この特集陳列においても《親指のマリア》をメインにすえて聖母マリアを興味深く鑑賞した。
美術館・展覧会をハシゴする際自分なりにテーマを持って鑑賞すると、
新しい発見もあり、楽しみ方がより広がると思う。

おでかけ記録(http://ryuu.blog.so-net.ne.jp/2013-03-31

聖母マリアの美術(http://ryuu.blog.so-net.ne.jp/2011-12-14

カルロ・ドルチ 《悲しみの聖母》&《親指のマリア》
国立西洋美術館&東京国立博物館で購入したポストカード。
カルロ・ドルチ 《悲しみの聖母》《親指のマリア》
同日に鑑賞できる期間は限られているので、
とても貴重な機会、有意義な時間を過ごすことができた。

東京国立博物館の桜

博物館でお花見を(http://ryuu.blog.so-net.ne.jp/2013-04-03

東京国立博物館~研究員が選ぶ12部門ベスト3~ [DVD]

東京国立博物館~研究員が選ぶ12部門ベスト3~ [DVD]

  • 出版社/メーカー: SMD jutaku(SME)(D)
  • メディア: DVD


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kuwachan

おはようございます。
ただ何となく見るよりも、テーマを持って見ると違いますよね。
以前京都で小堀遠州をテーマに庭園を回った時に強く感じました^^
by kuwachan (2013-04-11 07:36) 

りゅう

○kuwachanさん、nice!&コメントありがとうございます(^o^)丿
自分なりのテーマを持つこと、動機付けは重要ですよね。
見るときも、撮るときも♪(^_^)
春ですね~、お花がいっぱい咲いていますね~
お散歩写真の季節ですね~
これまた余談になりますが、
アップルマンゴーの花が咲きはじめましたよー!
今年は蕾がいっぱい、ちょっと期待できそうです!!O(≧∇≦)O イエイ!!

○月夜さん、nice!ありがとうございます(^o^)丿

○風船かずらさん、nice!ありがとうございます(^o^)丿

○りんこうさん、nice!ありがとうございます(^o^)丿

○ぽんこさん、nice!ありがとうございます(^o^)丿

○にいなさん、nice!ありがとうございます(^o^)丿

○miyokoさん、nice!ありがとうございます(^o^)丿

○TaekoLovesParisさん、nice!ありがとうございます(^o^)丿

○pistacciさん、nice!ありがとうございます(^o^)丿
by りゅう (2013-04-16 01:20) 

りゅう

○くみみんさん、nice!ありがとうございます(^o^)丿
by りゅう (2013-04-29 02:06) 

りゅう

○naonaoさん、nice!ありがとうございます(^o^)丿
by りゅう (2013-05-07 22:20) 

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