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百寿を超えて-奥村土牛・小倉遊亀・片岡球子- [08展覧会感想]

山種美術館で開催されていた「百寿を超えて-奥村土牛・小倉遊亀・片岡球子-」展を観に行きました。
 高齢化社会が叫ばれる昨今では、定年を迎えても、まだまだ働き盛り。それどころか、80歳、90歳になってもなお、いきいきと人生を謳歌する元気なシルバー世代はますます増えています。なかでも画家には長寿が多く、晩年になってもなお、魅力ある作品を制作する作家たちもいます。芸術活動というものには年齢制限はなく、命ある限り尽きない創作意欲や創造力がこうした活力を支えているのでしょう。
 「私はこれから死ぬまで、初心を忘れず、拙くとも生きた絵が描きたい。」と八十路を越えても初心にかえって制作に没頭した奥村土牛は101歳(平成2年)没。「たどり来し道なつかしく ふりかえりつつ いまさらに」と、過ぎたことは振り返らず人生を潔く生きた小倉遊亀、105歳(平成12年)没。そして、「誰にも影響されないというのが私の生き方」と人まねを嫌いk、独特な色彩感覚でえ人々を惹きつけた片岡球子は「、103歳(平成20年)没。-。いずれも、百寿を超えてなお、意欲的に制作活動を続けた画家たちです。
 本展覧会では、敬老の日を迎えるこの季節に、現代の元気な「シルバー世代」にエールを送るべく、齢を重ねてもなお活躍した3人の日本画家たちを紹介いたします。それぞれの作家の個性あふれる人柄と作品を通して、明治、大正、昭和、そして平成と4つの時代を生き抜いた“スーパー長寿画家”のパワーを感じていただければと思います。

 
チケットまずは、奥村土牛の作品。
最初の展示室でガラスケースに入っていた作品で印象的だったのは、《蛤》《栗鼠》《栗鼠》がとっても可愛い♪o(*^▽^*)o ゲラゲラゲラ
《兎》が2点。ひとつはふわふわの白うさぎ。もうひとつは、チケットの表にある黒うさぎ。白うさぎも黒うさぎもとっても可愛い♪うさぎ好きにはたまらん!!
バタ ヾ(≧∇≦)〃ヾ(≧∇≦)〃バタ

《醍醐》はチラシの表(上)にある作品。京都の醍醐寺にあるしだれ桜の老樹を描いたもの。圧倒的な存在感とともに、気品、静謐、おだやかさ、を兼ね備えた素晴らしい作品。
鑑賞後、図書館で『現代の日本画(2) 奥村土牛 (学研)』を借りてきました。この画集の解説によると、「この作品に接した時、まず眼につくのは満開に花開くピンクの桜の華麗さである。花はすべて正面向きに大きく開き、地面には散った花びらを暗示するかのごとく胡粉が点々と紋様のように置かれている。この写実を離れた装飾的描法がどれほど爛漫の春を強調しているかはかりしれない。しかし、少し注意深く見るならば、真中にデンと据えた太い樹幹に対し、右方の細い支柱、左方へ空間をつくる築地塀の横への広がりがなければ、この作品はまるで平凡なものとなってしまうことに気づく。華麗さに眼をうばわれがちだが、その奥には確固たる造形的配慮がなされている。(P119)」とのこと。この解説を読んで、気づかないことだらけ、知らないことだらけだったということに気づき、もう一度観たいという気持ちがとても強くなった。でも、観るなら、やっぱり春がいい!!(^_^)

パンフレット《鳴門》は山種美術館のパンフレットの表紙を飾る作品。現代日本画の最高傑作とされる作品だそうだ。淡い色彩がとても優しい。が、ぐるぐるのうずをじっとみていると、荒々しさや激しさが怖いほど伝わってくる。
「現代日本画の最高傑作とされる作品で、土牛夫人の実家・徳島へ行って帰途の取材である。あまり船が揺れるので夫人に帯をつかんでもらいながら『まるで人が見たら符牒かと思うかもしれぬような写生を何十枚も描いた。そして同時に、そのときの新鮮な印象を頭の中に刻みつけた』という。したがって、印象をもとに制作するという写実の画家・土牛としては異例な制作法となった。そのためであろう、渦に島影という簡潔な構図、白緑に胡粉と黄土というおさえた色調である。しかしむしろ渦だけの抽象的表現にすることを考えたが、どうしても決心がつかなかったといっている。そして『私たちはどうも写実にひかれすぎるのではないでしょうか』とも述べている。これは写実を突き詰めた結果、土牛の表現が次第に写実を離れ、簡略化されてきたことを物語っている。(P117)」とのこと。

チラシの裏(中段中)《聖牛》には白い牛が2頭描かれている。きれいな輪郭線。牛の白と背景の色との組み合わせがきれいで、とても気品がある。牛たちもとても上品、さすが聖牛♪(≧▽≦)b長野の善光寺にインドから聖牛が贈られたという話を聞いた土牛が、息子を連れて善光寺まで写生に行ったそうだ。この写生は1週間ほどかかったとのこと。
また、《龍》はとても格好良く、《鹿》はとても可愛いかった!!聖牛とともに写実的で特徴をよく捉えている作品。一応、龍は実在してないけど。(* ̄m ̄) ププッ

《門》は姫路城の門を描いた独特の味わいを持った作品。ちょうど鑑賞前にテレビ東京・美の巨人たちで取り上げていた。テレビの中にテレビがあって、その中にまたテレビがあって・・・みたいなビデオアートを思い起こさせる不思議な魅力。自分の前に本当に門があるかのような感じ。とても見応えのある作品でした。(^o^)丿
テレビ東京 美の巨人たち(http://www.tv-tokyo.co.jp/kyojin/index.html
奥村土牛《門》(http://www.tv-tokyo.co.jp/kyojin/data/080913/

今回最も楽しみにしていた小倉遊亀の作品は5点。

以前、東京国立近代美術館の所蔵作品展で小倉遊亀の作品を鑑賞してから、とても気になっていました。繊細優美な輪郭線がとても魅力的。色の組み合わせ方も絶妙。私にとっては、興味はあっても、普段なかなか見ることのない画家のひとり。チラシの裏(上段・右)にある《憶昔(おくせき)》は背景の処理がとても面白い作品。花の黄色、葉の緑色と黄色、花瓶の白色、花瓶に描かれた赤い花・・・見所満載。v(≧∇≦)v イェェ~イ♪
《舞う(舞妓)》はチラシの裏(上段・左)の作品。紫の着物に赤い帯。《舞う(芸者)》はチラシの表(右下)の作品。黒い着物に白い帯。この《舞う》は対になっている。もちろん展示も。(^_^)1971年(昭和46年)に描かれた舞妓(紫)は第56回院展に、翌年に描かれた芸者(黒)は第57回院展に出品されたもの。どちらもすっごい美人!!(^o^)丿《涼》は第58回院展に出品されたもの。こちらも背景がとても綺麗で面白い。
チラシの裏(上段・中)にある《咲き定まる》は牡丹の花をドアップを描いた見ごたえのある作品。

先日の迷宮美術館では「日本画家 小倉遊亀 101歳の再生」というタイトルでメキシコマンゴウを描いた《マンゴウ》という作品を紹介していました。ハクション大魔王みたいなおっさんはともかく、SHELLYさん出ていましたね~v(≧∇≦)v イェェ~イ♪
実は、リトル・チャロを毎週見ていまーす♪ニャハハ (*^▽^*) (おっと、話がそれてしまった・・・)
NHK迷宮美術館(http://www.nhk.or.jp/bs/meikyu/
チャロ・オンライン(http://www.nhk.or.jp/charo/

鑑賞後、図書館で『現代の日本画(4) 小倉遊亀 (学研)』を借りてきました。
この画集のカバーは表紙が《舞う(舞妓)》、裏が《舞う(芸者)》
この画集で特に気になったのは、1969年(昭和44年)に描かれ、第54回院展に出品された《舞妓》(京都国立近代美術館蔵)という作品。
「・・・小倉遊亀は、《舞妓》に純真無垢な心を描こうと考えたが、それとは別にこの作品を描くにあたり、彼女はもうひとつ大きな望みを抱いていた。それは、日ごろ考えていた日本的な絵の実践だった。・・・『日本的な絵といえば、きまったように墨絵、とくる。この偏見を何とかして破りたい。何で墨絵が日本の一枚看板なんです。・・・・・・一体、墨とか、絵具とか、そんな材料にだけ日本の心があってたまるものでない。何をつかっても、どんなものを描いてもよいのです。それを描く人の心の問題なんだから。《源氏物語絵巻》は極彩色じゃありませんか。あれが濃彩だから日本的でないなんて逆説はなり立ちません。・・・・・・濃彩でいて余韻のある、精緻でいて簡素な、素敵な絵は生れまいかなあと考えた。』(『絵画室の中から』(昭和五四年)
そして、《舞妓》においてもこの決意を実践しようとしたのである。
また、小倉遊亀にとって余白というのも大変重要な問題であった。彼女は余白が美しくなければ、描く対象そのものの形も美しいはずがないと考えるのだ。とにかくこの《舞妓》ではそれまでになかったほど余白の表現に気をつかい、情熱を傾けたのであった。この《舞妓》の背景の『宇宙も世間もみな呑んだ』白は、気の遠くなるような工程を経てできあがった。(P104)」
「小倉遊亀は京都で舞妓の舞を見る機会があり、その真剣な姿に心打たれ絵筆を握ったのであった。その表面的なあでやかさのみならず、舞う一瞬の動と静のきわみ、それにぴたりと決まった呼吸といったものが画面を通して十分感じられ、芸そのものの持つ心地よさをあらためてわれわれに教えてくれる。この一途に舞う姿に、おそらく作者は無心に描き続けたいと望む気持を重ね合わせたことだろう。(P116)」

この画集には滋賀県立近代美術館の所蔵作品が多数掲載されていました。どうやら滋賀に作品がいっぱいあるようですね。滋賀はちょっと遠いので、機会があればということで。その際には、ぜひとも、京都国立近代美術館所蔵の《舞妓》とともに鑑賞したいです♪ヾ( ̄ー ̄)ゞ
京都国立近代美術館(http://www.momak.go.jp/
滋賀県立近代美術館(http://www.shiga-kinbi.jp/

片岡球子は6点。
チラシの表(左下)にある《北斎の娘おゑい》が見ごたえありました。片岡球子の作品はいずれもフォーヴのような荒々しい色彩が印象的だった。
恥ずかしながら、片岡球子については全く知りませんでした。(^_^;)
鑑賞後、図書館で『現代の日本画(6) 片岡球子 (学研)』を借りてきました。
この画集の解説によると、「日本美術院同人であり、日本芸術院会員である片岡球子は、昭和六一年に文化功労者選ばれ、平成元年に文化勲章を受章した日本画家である。女流作家として五人目の文化勲章受章者であり、美術部門では、昭和二三年の上村松園、同五五年の小倉遊亀に次ぐ三人目の受賞者である。
受賞者としての顕彰理由は、歌舞伎、能、舞楽のシリーズ、火山シリーズ、裸婦シリーズなど、数多くの秀作を発表してきたなかで、とりわけ面構シリーズが、歴史上の男たちの顔をモチーフに深い洞察を加え、対象の内面まで踏み込んで現代日本画として昇華させたものであり、日本画に新生面をひらいたからであるという。(P104)」
とのこと。
大好きな上村松園、そして今展のメインに位置づけていた小倉遊亀に次ぐ、三人目の文化勲章受章者だそうだ!(」゜ロ゜)」(」゜ロ゜)」(」゜ロ゜)」オオオオオッッッ
もう一度じっくりと画集をチェックし、理解を深めたいと思いまーす♪(=^^=) ニョホホホ


山種美術館



山種美術館(http://www.yamatane-museum.or.jp/

山種美術館


チラシ表 チラシ裏


百四の春―小倉遊亀画文集

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  • 作者: 小倉 遊亀
  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞社
  • 発売日: 1999/05
  • メディア: 大型本



小倉遊亀 百三の彩り (日経ポストカードブック)

小倉遊亀 百三の彩り (日経ポストカードブック)

  • 作者: 小倉 遊亀
  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞社
  • 発売日: 1998/09
  • メディア: 単行本



小倉遊亀 (日経ポケット・ギャラリー)

小倉遊亀 (日経ポケット・ギャラリー)

  • 作者: 小倉 遊亀
  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞社
  • 発売日: 1991/06
  • メディア: 単行本



小倉遊亀ポストカードブック 〔ちいさな美術館シリーズ〕 (ちいさな美術館)

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  • 作者: 小倉 遊亀
  • 出版社/メーカー: 青幻舎
  • 発売日: 2007/05/01
  • メディア: 文庫




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コメント 11

いっぷく

百寿を超えて創作活動を続けられるエネルギーには驚かされますが、
確かに長寿で活動されている方は多いようですね。
気品ある作品を生み続ける源は健康ですね。
by いっぷく (2008-11-06 09:00) 

エリザベート

言われれば確かに長寿の方が多いですね。心が穏やかに日々を過ごされるせいでしょうか? それにしても絵を描く力って衰えないものなのですね。
by エリザベート (2008-11-06 10:15) 

R-Month

長寿の方が多いのって何か理由があるんですかね?
漫画家は手塚治虫氏、石ノ森章太郎氏など、短命の方が多いのに。
by R-Month (2008-11-06 23:05) 

空

えぇっっ うさぎ好きにはたまらないですよっっ
白と黒なんて、なんてオーソドックスなっっ
そしてあの後ろからのアングルがまた可愛いっっ
いいっすねっっ じゅるっっ ←?(笑)
by 空 (2008-11-06 23:38) 

pistacci

迷宮美術館のマンゴウの話は、ちょっと感動的でしたね。
静物のひとつひとつが会話するように配置する、っていう解説を聞いて
本当にそう見えてきたから不思議でした。
by pistacci (2008-11-06 23:44) 

りゅう

○いっぷくさん、nice!&コメントありがとうございます(^o^)丿
百寿を超えて創作活動を続けるってもの凄いエネルギーですよね!!(^_^)
元気に100歳ってそれだけで凄いことなのに。
やはり健康でないと。
その源はおいしいものですかね~(*/∇\*) キャ

○エリザベートさん、はじめまして。nice!&コメントありがとうございます(^o^)丿
創作意欲が心を若くし、結果として長寿になるのかもしれませんね。
年を重ねるにつれて余計なものがそぎ落とされ、洗練された美しさが生まれてくるような気がします♪ヾ( ̄ー ̄)ゞ

○R-Monthさん、nice!&コメントありがとうございます(^o^)丿
やはりモチベーションが大きく影響していそうな気がします♪
そうそう、R-Monthさんは長寿の国!?に潜入中じゃぁあ~りませんか。
長寿の秘訣になりそうなものは見つかりましたか?(≧▽≦)b

○空さん、nice!&コメントありがとうございます(^o^)丿
さすが、おしりフェチの空さん!!
見事な食いつきっぷりですね~(* ̄m ̄) ププッ
空豆ちゃんがくぅちゃんのおしりに「カプッ♪」ってする日もそう遠くはなさそうですね~ニャハハ (*^▽^*)

○pistacciさん、nice!&コメントありがとうございます(^o^)丿
迷宮美術館大好きでーす♪(≧▽≦)b
私も、解説を聞いていたら、果物がひそひそ話をしているみたいに見えてきて、不思議な感じがしました。
小倉遊亀の作品、なかなか目にする機会が無いのがとっても残念です。
もっといっぱい見たいのに。。。

○Bonheurさん、nice!ありがとうございます(^o^)丿

○ぽんこさん、nice!ありがとうございます(^o^)丿

○TaekoLovesParisさん、nice!ありがとうございます(^o^)丿
by りゅう (2008-11-07 23:23) 

りゅう

○yukitanさん、nice!ありがとうございます(^o^)丿
by りゅう (2008-11-09 22:56) 

kumimin

こんにちは。
小倉遊亀さんの絵、かわいらしいですね=^^=
それにしても百歳を超えてお元気でこういう創作活動ができるなんてうらやましいです♪
ピカソも長寿でしたよね。

話は変わりますが、フェルメール展の売店のところで夫のお仲間が作られたリュートが展示してあるそうです。私はまだ見に行ってないんですが早く行かないと!でも、今日、迷宮美術館でまたフェルメール。混むかなあ?
by kumimin (2008-11-10 11:17) 

りゅう

○kumiminさん、こんばんは。nice!&コメントありがとうございます(^o^)丿
小倉遊亀さんの作品はなかなか観る機会が無いので、
私にとってはとても貴重な展覧会でした♪ヾ( ̄ー ̄)ゞ
迷宮美術館録画しましたよっ!(^_^)/
って、先週のピカソもまだ見ていませんけどね。。。
のだめ見てる場合じゃないな・・・(=^^=) ニョホホホ
リュート!!w(°o°)w おおっ!!
私が鑑賞したときも展示されていたのでしょうか?
ん~、全く記憶が・・・(ーーA;; アセアセ
by りゅう (2008-11-10 22:08) 

りんこう

僕も前から思っていましたが、長寿の方が多いですよね。
逆にクラシックの作曲家なんかは短命の人が多い気がします。
もちろんそうでない人もいるのですけれどね。
by りんこう (2008-11-11 22:23) 

りゅう

○りんこうさん、nice!&コメントありがとうございます(^o^)丿
そういえば、作曲家より画家のほうが長寿の方が多いですよね~
(今、気づきました!(^_^;))
100歳を超えてもなお制作・創作意欲が湧くというのは素晴らしいですね!
そのモチベーションが長寿の秘訣でしょうか?(^_^)

○naonaoさん、nice!ありがとうございます(^o^)丿
by りゅう (2008-11-14 21:07) 

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