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コロー展の予習 [アート]

「カミーユ・コロー、パリ近郊の自然を描いた画家集団、バルビゾン派のひとりです。
しかし、ミレーのように仲間と影響しあうこともなく、コローは独立独歩で自分の世界を掴みました。
『生きる目的は風景画を描くこと。』」
「印象派が誕生する10年も前に、
コローは何気ない日常でも印象深く描けることを照明したのです。」
「クロード・モネは、言いました。『コローは印象派の師である。』と。」
(美の巨人たち:カミーユ・コロー作「モルトフ ォンティーヌの想い出」より)

テレビ東京 美の巨人たち(http://www.tv-tokyo.co.jp/kyojin/
カミーユ・コロー作「モルトフ ォンティーヌの想い出」

コロー展に備えて図書館で借りた本です。
コローの風景 (美の再発見シリーズ)

コローの風景 (美の再発見シリーズ)

  • 作者: 嘉門 安雄
  • 出版社/メーカー: 求龍堂
  • 発売日: 1998/01
  • メディア: 単行本

内容(「BOOK」データベースより)
写生の旅に明け暮れ、画業一筋に生きた“良き人”コロー。産業化以前のフランスやイタリアの風景を描いた作品群を、肖像画の傑作とともに紹介する。
内容(「MARC」データベースより)
コローは色彩画家というより、むしろ調和の画家だ-彼の作品の大半は、調和に対する類まれな天分の発露だ、とボードレールが讃えた画家コローが、その本領を発揮した風景画の世界を、作品28点と小伝と解説で紹介する。


コローは謎だらけだ。
コローというと、
印象派に多大なる影響を与えた風景画の第一人者というイメージがあった。
しかし、それ以外のことについてはあまりよく知らない。
ボヤボヤしていてあまり写実的ではないので、
バルビゾン派というにはちょっと抵抗がある。
ベルト・モリゾと姉のエドマがコローから戸外制作を教わっていたということがとても興味深い。
コローの人柄や画風について触れることができたのは、
作品を鑑賞する上でもとても貴重は経験になると思う。

本の内容をちょこっとだけ。(^_^)
同い年のミシャロンに弟子入り。しかし、1822年9月、ミシャロンは急死してしまう。
「彼は、目の前に見えるものすべてを、最大の細心綿密さでもって、表現するという、貴重な助言をしてくれた(P7)」
《ティヴォリ、ヴィッラ・デステ庭園》(ルーヴル美術館蔵)
「庭を見下ろすテラスの手すりに腰掛け、だぶだぶの服を着ているのは、現地で画材を運ばせるために雇った少年だろう。少年の姿が要となって、前景の建物と中景の緑の木立、後景の丘の連なりに絶妙の調和を生んでいる。ベルト・モリゾが、この作品を模写している。(P76)」
《モルトフォンテーヌの思い出》(ルーヴル美術館蔵)
「数多くの先行作品があり、コローの生前から数知れない類似作を派生させた有名作。コローの詩的風景画の頂点である。現在はルーヴルが所蔵するこの作品は、1864年のサロンに出品されて国家買い上げとなり、長年フォンテーヌブロー宮に置かれていた。コローは作品が手許を離れるのを惜しんで写真に撮影し、自分の部屋に飾っていたという。(P77)」 

「アトリエを飛び出して、さあ、野に出かけよう。
芸術の女神は森にいる。
そして、そこには、溢れんばかりの愛がある。」
(新日曜美術館:「コロー  静かなる森のささやき」より)

NHK 新日曜美術館(http://www.nhk.or.jp/nichibi/
コロー  静かなる森のささやき
 
今回の展覧会はルーヴル美術館の全面協力によるものだそうだ。
05年のルーヴル美術館展(横浜)の時にコローの作品が5点きていた。
師であるミシャロンの作品も。
ジャン=バティスト=カミーユ・コロー《サン・ローの街の全景》(ルーヴル美術館蔵) ジャン=バティスト=カミーユ・コロー《ティヴォリ、ヴィッラ・デステの庭》(ルーヴル美術館蔵)
【左】《サン・ローの街の全景》(ルーヴル美術館蔵)
【右】《ティヴォリ、ヴィッラ・デステの庭》(ルーヴル美術館蔵)
ジャン=バティスト=カミーユ・コロー《泉のわきにたたずむギリシア娘》(ルーヴル美術館蔵) ジャン=バティスト=カミーユ・コロー《甲冑をつけた男-騎士》(ルーヴル美術館蔵) ジャン=バティスト=カミーユ・コロー《カステルガンドルフォの思い出》(ルーヴル美術館蔵)
【左】《泉のわきにたたずむギリシア娘》(ルーヴル美術館蔵)
【中】《甲冑をつけた男-騎士》(ルーヴル美術館蔵)
【右】《カステルガンドルフォの思い出》(ルーヴル美術館蔵)
《カステルガンドルフォの思い出》は今までに鑑賞したコロー作品の中で最も気に入っている作品。現在開催されているコロー展の目玉、《モルトフォンテーヌの思い出》に通ずるものがある。

アシル=エトナ・ミシャロン《滝、ティヴォリ》(ルーヴル美術館蔵) アシル=エトナ・ミシャロン《フラスカテイの眺めに想を得た風景》(ルーヴル美術館蔵)
【左】アシル=エトナ・ミシャロン《滝、ティヴォリ》(ルーヴル美術館蔵)
【右】アシル=エトナ・ミシャロン《フラスカテイの眺めに想を得た風景》(ルーヴル美術館蔵)
「・・・若い風景画家の教育のために開いたアトリエを率いながら、1821年から22年にかけての冬にはサロン向けの野心作にとりかかることを決意した。・・・イタリアでの習作を活用して、ミシャロンは3点の大作を描いた。それぞれが全く異なる詩的・絵画的世界を構成するもので、批評家や愛好家に才能の多彩なところを示すことをもくろんでいた。ロマン主義的な劇場に想を得た《ヴェッターホルンとシャイデック越えの眺め》(所在不詳)、それとは対照的にデビュー時に成功を収めた新古典主義的な流れを継承する《レムノス島のフィロクテテス》(モンペリエ、ファーブル美術館)、そしてもう1点が、田園風景というジャンルに属する本作品である。他よりも簡素で写実的な技法で描かれており、『グランド・ツアー』の際に発見した景色の証となるイタリアの『思い出』の典型的な例となっている。(05年ルーヴル美術館展:《フラスカティの眺めに想を得た風景》解説より抜粋)」
アシル=エトナ・ミシャロン《レムノス島のピロクテテス》(ファーブル美術館蔵)アシル=エトナ・ミシャロン《レムノス島のピロクテテス》(ファーブル美術館蔵)
この作品はミシャロンが亡くなる年に制作した重要な作品で、物語風景画というジャンルに属するものだそうだ。
2005年4月から7月にかけてルーヴル美術館展(横浜美術館)、ファーブル美術館展(損保ジャパン東郷青児美術館)、山寺後藤美術館展(うらわ美術館)という3つの展覧会が関東で開催されていました。
ミシャロンの重要な3点のうち所在不明のものを除く2点を含め、計3点の貴重な作品と、
コローの素晴らしい作品を多数鑑賞することができました。
感想記事:
「ルーヴル美術館展-19世紀フランス絵画 新古典主義からロマン主義へ」
「南仏モンペリエ ファーブル美術館所蔵 魅惑の17ー19世紀フランス絵画」
「山寺後藤美術館所蔵 ヨーロッパ絵画名作展-宮廷絵画からバルビゾン派へ-」

こちらは05年のスコットランド国立美術館展で鑑賞した作品。
ジャン=バティスト=カミーユ・コロー《ラ・フェルテ=スゥ=ジュアール近郊の思い出(朝)》(スコットランド国立美術館蔵) ジャン=バティスト=カミーユ・コロー《山羊飼いの男》(スコットランド国立美術館蔵)
【左】《ラ・フェルテ=スゥ=ジュアール近郊の思い出(朝)》(スコットランド国立美術館蔵)
【右】《山羊飼いの男》(スコットランド国立美術館蔵)
この展覧会にはコローの作品が4点展示されていました。
いずれも素晴らしい作品でした。
感想記事:「スコットランド・国立美術館展 ~コロー、モネ、シスレー、そしてキャメロン~」

こちらは記憶に新しいフィラデルフィア美術館展の作品。
ジャン=バティスト=カミーユ・コロー《泉のそばのジプシー娘》(フィラデルフィア美術館蔵) ジャン=バティスト=カミーユ・コロー《テルニの山羊飼い》(フィラデルフィア美術館蔵)
【左】《泉のそばのジプシー娘》(フィラデルフィア美術館蔵)
【右】《テルニの山羊飼い》(フィラデルフィア美術館蔵)
感想記事:「フィラデルフィア美術館展 印象派と20世紀の美術」

こちらは会場である国立西洋美術館の所蔵作品。
ジャン=バティスト=カミーユ・コロー《ナポリの浜の思い出》(国立西洋美術館蔵) クロード・モネ《並木道(サン=シメオン農場の道)》(国立西洋美術館蔵)
【左】ジャン=バティスト=カミーユ・コロー《ナポリの浜の思い出》(国立西洋美術館蔵)
【右】クロード・モネ《並木道(サン=シメオン農場の道)》(国立西洋美術館蔵)
コローの作品は175×84cm、モネの作品は81.6×46.4cm。
サイズも展示場所も全く異なるので普段はあまり意識していませんが、構図がかなり似ています。
現在は改修工事のため新館が閉館となっておりますが、昨年まで、コローの作品はミレーの作品とともに印象派の展示室へと続く通路に展示されていました。
この展示場所はなかなかのクセモノ。
後ろはピカソやポロック等、20世紀美術の展示室の吹き抜け。
大きな作品なので全体を見渡す時はぎりぎりまで後ろに下がることになります。
その時の気分で、壁に寄りかかりながら、更にのけぞってみたりすることも。。。
手すりは意外と低い。
けっこうドキドキっす。( ̄▽ ̄;) ヌオー

「クロード・モネ『巨匠は唯一人、コローしかいない。
コローに比べたら、私たちなどとるに足らない存在だ。』

シスレーやピサロら、コローの弟子を名乗った画家もいた。
コローの言葉『自然を前にして我々が受ける 印象こそが 芸術におけるである。』
(迷宮美術館:『出張! コロー展』より)」

NHK 迷宮美術館(http://www.nhk.or.jp/bs/meikyu/


展覧会監修者の一人、ヴァンサン・ポマレッド(ポマレード)さんが、2005年にNHKで放送された「夢の美術館~ついに登場!ルーヴル名宝100選~」のなかで、「私の愛する一点」として、カミーユ・コロー《モルトフォンテーヌの思い出》を挙げていました。
この作品はフランスの家庭に飾られる複製画中で最も多いものだそうで、
フランス国民の心を掴んできた懐かしい風景が広がっているとのこと。
インタビューでヴァンサン・ポマレッド(ポマレード)さんは次のように語っておられました。
「私は、ずっと前から風景画をこよなく愛してきました。
私に言わせれば、コローこそ、自然を最も美しくうたうことができる画家なのです。
画面の右側、緑豊かに生い茂る木々はうっそうとしていて神秘的な雰囲気です。
それとは対照的に左側は、光に包まれた空気が実に繊細なタッチで表されています。
ドラマチックなパートと穏やかなパートが織り成す詩的な世界。
私はまるで音楽作品を観ているかのような印象を受けるのです。
この絵を観る度に、絵画と音楽との調和が実現されていることに感動を覚えてなりません。

また、高階秀爾さんは、コローを「詩人の心を持った画家」とおっしゃっていました。

「コローは、友人を通じて知った写真の世界に驚愕します。
そこには、油絵では表現されなかったもうひとつの森の姿が写しだされていたのです。
当時の写真は粒子が粗いものでした。
そして露光時間が長いため、風が少しでも吹くと輪郭がぼやけてしまいました。
更に、逆光などの光の加減によって被写体が白く霞んでしまうことも。
すべてが曖昧模糊とした森。しかし、それがコローの心を打ったのです。
なんと幻想的なのか。彼の画風はがらりと変わります。
明快な輪郭と色彩で描いてきたコローは、
写真と出会った頃から対象をぼんやりと描き始めたのです。」(美の巨人たちより)


※画集や他の図録では《モルトフォンテーヌの思い出》と記載されていましたが、
今展の公式サイトでは《モルトフォンテーヌの想い出》と記載されていました。
どーでもいいことかもしれませんけどね。
いちおー、念のため。(^_^)


展覧会監修者による一冊。
コロー名画に隠れた謎を解く!

コロー名画に隠れた謎を解く!

  • 作者: 高橋 明也
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2008/06
  • メディア: 単行本

出版社 / 著者からの内容紹介 繊細で詩的情緒を湛えた風景画家コロー。この寡黙で美しいと同時に革新に満ちた作品世界を、実際に画家が描いたフランス各地やローマを巡りながら辿り、名画に隠れた謎を解き明かす

★。、:*:。.:*:・'゜☆。.:*:・'゜★。、:*:。.:*:・'゜☆。.:*:・'゜★。、:*:。.:*:・'゜

『コロー 光と追憶の変奏曲』

国立西洋美術館(http://www.nmwa.go.jp/index-j.html

2008年6月14日~8月31日

公式サイト(http://www.corot2008.jp/

表 裏

`*:;,.★ ~☆・:.,;*

05年のルーヴル美術館展ファーブル美術館展に画像を追加しました。

 


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ぽんこ

前記事、nice!押し忘れてました(;´_`;)暑さボケ。
さすがりゅうさん、ちゃんと予習するんですね。
100倍も楽しめそうな予感です。
くじ運の神様はすべてりゅうさんのところに行っているようですね。
by ぽんこ (2008-08-12 10:08) 

りゅう

○ぽんこさん、nice!&コメントありがとうございます(^o^)丿
コローはわからないことだらけでした。
作品はいっぱい観ているのに・・・(^_^;)
楽しみ、楽しみ♪ヾ( ̄ー ̄)ゞ
あみだくじの神さまはぽんこさん専属ということで。(≧▽≦)b

○西尾征紀さん、nice!ありがとうございます(^o^)丿

○xml_xslさん、nice!ありがとうございます(^o^)丿

○yukitanさん、nice!ありがとうございます(^o^)丿

○TaekoLovesParisさん、nice!ありがとうございます(^o^)丿

○poyoyonさん、nice!ありがとうございます(^o^)丿

○pistacciさん、nice!ありがとうございます(^o^)丿

○plotさん、nice!ありがとうございます(^o^)丿
by りゅう (2008-08-14 12:32) 

りゅう

○naonaoさん、nice!ありがとうございます(^o^)丿
by りゅう (2008-08-15 22:32) 

りゅう

○いっぷくさん、nice!ありがとうございます(^o^)丿
by りゅう (2008-08-17 21:10) 

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