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スイス・スピリッツ-山に魅せられた画家たち展 [06展覧会感想]

11日に「スイス・スピリッツ-山に魅せられた画家たち」展を観に行きました。この展覧会は、スイス・アルプスの山に魅せられ、それらを描いた画家たちの作品を取り上げるもので、間近に迫る山が初めて描かれたのは、18世紀後半に近代登山が始まり山岳調査の科学者たちに同行した画家が記録として描きとめた山の絵がそのキッカケだそうだ。

~展示構成~
第1章 画家による高地アルプスの発見 第2章 国民絵画としての19世紀山岳絵画 第3章 1900年前後初期モダニズムにおける山岳風景 第4章 色と形の解放 第5章 キルヒナーと「赤・青(ロート・ブラオ)」 第6章 ポップ・アートのイコンとしての山 第7章 現代美術における山

まずは、カスパー・ヴォルフ11点。山岳調査としての絵画、魅せるためものではなく、記録としての絵画。全体的にシンプルでコントラストが弱くすっきり。迫り出してくるというか迫ってくるような感覚、迫力がほとんど感じられません。コローやミレー、クールべといったバルビゾン派や写実主義、さらにはドイツ・ロマン主義に目が慣れてしまっているせいか、物足りなさを感じる。唯一、そういった感覚を楽しむことができたのは《シュタンス近くのドラゴン洞窟》

魅せるということを意識するようになってからの絵画、迫力のある見応え十分の作品がヨハン・ゴットフリート・シュテファン《ローゼンラウイ渓谷》。この作品は木がポイントかな。とても爽やかな空が特徴のシャルル・ジロン《ラヴェイの農民と風景》。草刈を終え、佇んでいるよう(立ち話?)。山そのものというよりは、山での生活の様子を描いている作品。この大きなカマは西洋の魔女がよく持っているもの!?アレクサンドル・ペリエ2点。《テリテット近郊の夜》はとても幻想的、《グランモン山》は淡い色彩のとても綺麗なもの。このあたりにくると、山岳調査の面影はない。

今展覧会の大本命、ジョヴァンニ・セガンティーニ《アルプスの真昼》。すっきりと清々しい空の青色、下草を描いた絵の具の凹凸がなかなか見応えある。期待していた以上に素晴らしい。この作品の姉妹作品が大原美術館所蔵の《アルプスの真昼》だそうだ。どうせなら、並べて展示して欲しかったなぁ。(連作好きのたわごとです・・・ププッ ( ̄m ̄*))次に、アノぺったんこの彫刻で有名なアルベルト・ジャコメッティの父、ジョヴァンニ・ジャコメッティ《ベルゲル渓谷の冬》は淡い色彩のとても綺麗な作品。そして、ジョヴァンニ・ジャコメッティ、ジョヴァンニ・セガンティーニの共作《ふた組の母子》は装飾的な感じで見応え十分。うねりとか、チョットやり過ぎ・・・

エルンスト・ルートヴィヒ・キルヒナーはいずれも、よく言えば、スタイリッシュ、斬新、かっこいー、悪く言えば攻撃的で毒々しい、ある意味病んでる!?なんと言うか・・・鮮やかな色彩ではあるが、ぎすぎすしていて尖がった感じ。確かにスイスの山は険しく切り立っている。どっしりと構えた靜的な感じもある。キルヒナーはそれらに対し果敢に挑むべく躍動感を描いたかのようで、まさに動的。本来の山の持つ激しさや厳しさ、内に秘めているパワーを描いたかのよう。あまり好きではないが。

パウル・クレー《贋の岩》は黒地に赤・・・すげぇ~!!(あまり好きではないが…(ーー;))オットー・モラハ《ハスリ渓谷の深いモミの木》は未来派キュビスムだそうだ、《タッツェルヴルムの森》もいいね!!アルブレヒト・シュニーダーの《風景》3点は面白い、また、ディーター・ロートのシルクスクリーンはとても綺麗でベタ塗りの後にはナイス!!サミュエル・ブリー《サイケデリックな山小屋》は赤と緑・・・確かにサイケデリック。。。ある意味いっちゃってる!?バルタザール・ブルクハルト《ベルニナ高原》は綺麗な写真。ジャン=フレデリック・シュニーダー《風景1-35》は壁一面に小品が並ぶ。プルート君発見♪(^o^)丿

アルプスの「山」をテーマに雄大な自然を描いた(記録した)作品をノンビリとゆったりと鑑賞。知らない画家ばかりのチョット地味だけどなかなか面白い展覧会。「山」をテーマに絵画・芸術がどのように変化(進化)を遂げたのか、さらにはそこからどのようなインスピレーションを受け、どのように人々に受け入れられていったのか。一本バシッと柱の通った感じがする企画展示。絵画好きのみならず、山好きの人にも受け入れられそうな感じ。でも、やっぱり地味だ・・・ププッ ( ̄m ̄*)
前半の作品は比較的ナチュラルな感じだが、中盤の作品はいじりすぎ。後半の作品はアルプスの山が観光用(商業的)に作られた(維持されている)かのようでチョット複雑・・・
確かに、アルプスの山は素晴らしい。しかし、絵画であれ、写真であれ、「芸術の対象としての山」は個人的には富士山が一番美しいと思う。アルプスの山と真剣に対峙したいのなら、そのような先入観は持つべきではない。しかし、私にはそれは無理でした・・・イヤイヤ  へ(* ̄ー ̄)>ちなみに、富士山が一番美しいという考え方はこの展覧会を鑑賞した今でも変わらないっす。(^o^)丿

  • 図録:2500円(税込)
  • 音声ガイド:500円(税込)

Bunkamuraザ・ミュージアム(http://www.bunkamura.co.jp/) 

 

表裏

【長野展】 松本市美術館:2005年10月29日~12月23日
【島根展】 島根県立美術館:2006年1月2日~2月24日
【東京展】 Bunkamuraザ・ミュージアム:2006年3月4日~4月9日

 

「0406スイス・コンテンポラリー・アート・イン・ジャパン」プログラムだそうです。
愛・地球博の開催に際し、日本での展開が決まったこのプログラムでは、音楽、ダンスそしてコミックなど幅広い分野のスイス現代芸術を紹介する35ものイベントが2004年10月から2006年9月にかけて開催されるとのこと。この「スイス・スピリッツ」もその一環として開催されるものだそうです。
ダイナミック・スイス


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TaekoLovesParis

りゅうさん、こんばんは。
ひとつ、ひとつの作品のことをきちんと書いてくださっているので、読みながら
見たときの記憶をたどって思い出していました。
ここのジャコメッティは彫刻家のお父さんだったんですね。そいえば、彫刻家は
ジョバンニじゃなくて、アルベルトでした。
結びは富士山賛歌ときましたね。予想外デシタ。
by TaekoLovesParis (2006-03-24 23:21) 

りゅう

>TaekoLovesParisさん、nice!&コメントありがとうございます。(^○^)v ワーイ
「山」はやっぱり富士山ということで♪ ヾ( ̄ー ̄)ゞ
しかし、アノ空の美しさ、透明感はアルプスならではですね!!
ジャコメッティ、父のほうでしたね、ジョバンニの作品は初めてです。(^o^)丿
by りゅう (2006-03-25 22:40) 

Tak

私も富士山に一票!!
by Tak (2006-03-31 21:40) 

りゅう

>Takさん、こんばんは。
やっぱり富士山ですよね ヾ( ̄ー ̄)ゞ
さいたまからも富士山が見えます(チョット小さいですが…)
高層ビル、陸橋の上、田んぼの真ん中・・・(^_^;)
by りゅう (2006-04-01 02:44) 

アイレ

りゅうさん、こんばんは
セガンティーニは大原美術館の作品も一緒に見たかったですね。
自分のブログでは特に取り上げませんでしたが、「アルプスの真昼」は周囲1mくらい光を放ってました!!!

あ、私も富士山派です。毎日見てますです!!!
by アイレ (2006-05-25 23:01) 

りゅう

>アイレさん、TB&コメントありがとうございます(^o^)丿
「アルプスの真昼」、ホント、存在感が違いましたね!!

やっぱり富士山ですよね~ヾ( ̄ー ̄)ゞ
先日、アイレさんのブログでとても綺麗な富士山の写真を拝見しました。
あんなに見事な富士山を毎日見れるなんて、とても羨ましいです♪
by りゅう (2006-05-26 21:30) 

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