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スコットランド国立美術館展 [05展覧会感想]

19日の午後、「フランス印象派と19世紀のスコットランドの画家たち スコットランド国立美術館展~コロー、モネ、そしてキャメロン~」を観に行きました。この展覧会は、150年以上の歴史を誇り、そのコレクションの豊かさと質の高さで知られる、スコットランド国立美術館の膨大な収蔵品の中から、19世紀のスコットランド絵画とモネやシスレーなどフランス印象派の名品を中心に、当時の身の回りの事物や風景、人物像を描いた心なごむ95作品を紹介するものだそうです。 

~作品構成~
「Ⅰフランスの画家」「Ⅱスコットランドの画家」

ジョゼフ・ビドー《公園の木々の道》は緻密でとても綺麗な風景画で、覗き込んでジックリと観てしまいました。最初の展示だというのに、近寄ってみたり離れてみたり・・・今回の展示作品の中でも指折りの素晴らしい作品がいきなりでした!!(^_^;)カミーユ・コロー《柳の木立の近くで草を刈る男、アルトワにて》《ラ・フェルテ=スゥ=ジュアール近郊の思い出(朝)》《クーブロンの風景》はいずれもボヤボヤ感いっぱいの、ふんわり、やんわりとした作品。午前中のプーシキン美術館展の疲れを癒すにはちょうど良い作品群です。特に《ラ・フェルテ~》はのんびりと寝そべって観たくなるような(実際にその風景の中に入って、そこでごろんと横になりたくなるような)優しい作品。

ギュスターヴ・クールベ《渓谷の川》はとても力強い渓谷の荒々しさと穏やかな水面との対比が面白い作品。どちらかというとカッコイイ!!遠景の山がチョット青すぎるけど・・・ウジェーヌ・ブーダン《ボルドーの港》《青空市場、ブリュッセル》は、《ボルドー~》はキャンヴァスの3分の2以上を占める空と雲がとても綺麗でした。(もちろん港の様子も綺麗ですが・・・(^_^;))《青空市場~》という水彩は鉛筆のスケッチに軽く色を置いたという感じ。ブーダンの油彩はキッチリと描きこんでいるものが多く几帳面というか繊細(神経質?)な印象があったのでこういう即興的なものはとても興味深く、面白いですね!!アルフレッド・シスレー《シュレヌのセーヌ河》は穏やかで心落ち着く作品。ノンビリと鑑賞♪

やっぱり、凄かった~♪モネの積みわら

クロード・モネ《積み藁、雪の効果》光の描写がとても面白く、これはおすすめ!!一見すると画面中央に積み藁がポコッとあるだけという感じですが、その色彩は見応え十分。モネの連作を観てその色彩感覚に惹かれたことのある方なら、その魅力はご理解いただけるのではないでしょうか。図録の解説によると「この油彩画はモネの初めての大きな「連作」で、13点以上に及ぶ作品群の一つである。そこでは、一年を通して一日の異なる時間帯に一つのモティーフを描写することが目指された。本作品では、すがすがしく晴れた冬の日の微妙な光の輝きが捉えられている。」とのこと。背景は大胆に省略され(一応、描かれてはいます)、はっきりいって積み藁もかなりどうでもいいという感じ。重要なのは積みわらに注がれる光とその影。プーシキン美術館展の《ジヴェルニーの積みわら》ポーラ美術館の《ジヴェルニーの積みわら》は背景にポプラ並木などが描かれ積みわらのある風景を主題としているといえますが、こちらの作品の主題はずばり、だと思います。埼玉県立近代美術館所蔵の《ジヴェルニーの積みわら、夕日》の捕らえ方、背景の描き方がとってもよく似ています。(色彩や構図は異なります。)ぜひとも、並べて鑑賞したい作品です!!

 この展覧会、フランスの画家の作品はほとんどが風景画で、人物や静物の作品が少ないのですが、素晴らしいものもそれなりにありました。ベルト・モリゾ《庭にいる女と子供》はモリゾらしい作品。この構図や子供の捕らえ方は女性ならではという感じです。中央の木を境に左右が別のもののよう。タッチは早く荒々しいが、繊細で温かく優しさに溢れている。見応え十分です!!オーギュスト・ルノワール《子供に乳を飲ませる女性》も優しさに溢れた作品で、白色がとても綺麗です。解説によると「ピラミッド型の構図は聖母子像を思い起こさせ、また特にその温かみのある肌の色調は、明らかにルノワールが大いに賞賛していたルーベンスからの影響である。」とのこと。アンリ・ファンタン=ラトゥール《桃》は、ずばり、美味しそう♪(*^.^*)エヘッ

スコットランドの画家は初めて見聞きする画家ばかり。でも・・・\(*^^*)/

アレキサンダー・ネイスミス《エディンバラ城とノール湖》は映画に出てきそうな、かっこい~お城です。(^o^)丿雲の切れ間から差し込む光がナイス!!サミュエル・ボウ《セント・アンドリュースの沖合》は船に打ち寄せる(襲う?)波がとてもリアル!!この船、沈みそう・・・遠景の聖堂が逆光によって厳かでチョット幻想的。ロバート・ハードマン《コーリの河岸、アラン島》は穏やかで優しい水彩。水面が繊細でとても美しい!!

ジョン・マクホワーター《夜明け、ノーサンバーランド州、バーウィック・アポン・ツイード》《オールド・エディンバラ》は共に水彩ですが、全く画風の異なる作品。《夜明け~》は油彩のように力強く、《オールド~》は水彩ならではの幻想的な優しい感じのもの。特に《オールド~》の霧が立ち込めた様子はとても綺麗です。解説によると「マクホワーターは特に、輝く日の出や日の入りを描くことを好んだ。これらの主題は、彼に普段は使わない、あるいは大胆な色彩の組み合わせを使う機会を与え、生き生きとした大気の効果を生み出すことを可能にした。マクホワーターの自由な筆致や大胆な色彩、輝く空は、ターナーの水彩画を思い出させる。彼が青色紙を使用するのも、色紙に描くことの多かったターナーの影響である。」とのこと。

スコットランドの画家の作品で一番印象深かった!!《苺とクリーム》

ロバート・ゲムル・ハッチソン《苺とクリーム》は、光と風を感じることのできるとても素晴らしい作品。印象派のように明るい色彩と素早いタッチのとても綺麗なもの。特に青色と白色の使い方は見応えあり!!印象派と共にスコットランドの画家を紹介するこの展覧会の作品構成がなんとなく理解できる。(それ以外はほとんどがバルビゾン派?)でも、このハッチソン、絵画全体の構想は、ハーグ派の画家たちにその多くを負っているそうだ。ハーグ派って何???(=^^=) ニョホホホ

ジョン・エヴァレット・ミレイ《優しき目は常に変わらず》はとても綺麗な女性の肖像。服もスカートもとても繊細で見応え十分。服がふっくらとしてチョットお腹が出ているように見える・・・ウエストを絞った感じの現代風にするとものすごくかわいい服だと思います。もちろん、女の子も!!顔や髪型が現代風で1881年の作品(女性)とは思えない。解説によると「この理想化された肖像は、子役俳優」だそうだ。「この作品の意味深長な現タイトルは、ヴィクトリア朝の女性詩人エリザベス・バレット・ブラウニングによる『カタリナからカモンズへ』からの引用で、当り障りのない最初の《スミレの花を持つ少女》からミレイが変更したものである。」とのこと。ぜんぜん分からん・・・<(; ^ ー^) マイッタマイッタ。ヒュー・キャメロン《キンポウゲとヒナギク(画家の娘)》は、チラシの表にもある可愛らしい女の子です。とても優しい目をしています。髪をみると前から風を受けているかのようで、バックの黒と相まってとても不思議な感じ。

事前にHPで作品リストをチェックしていたのですが、スコットランドの画家はほとんどが知らない人ばかり。かなり不安だったのですが、印象派もあるし風景画が多そうだったので、まぁ、チョット行ってみようかって軽い感じで観に行きました。「コロー、ピサロ、モネ、ルノワール、モリゾ、ドガあるし」って感じで。いや~、掘り出し物の展覧会でした!!土曜日の午後にもかかわらず、ゆったり、ノンビリと鑑賞。しかも、大好きな風景画に囲まれて。午前中のプーシキン美術館展は代表的な作品でねじ伏せるかのようなパワー漲る勢いの感じられる展覧会でしたが、こちらは抑揚があり、ある種の余裕が感じられる懐の深い展覧会という印象でした。

フランス印象派とスコットランドの画家とで、それぞれ壁の色を変えての展示です。それも単に会場を真っ二つに区切ってフランス~、スコットランド~ではありません。とても工夫のある凝った展示構成です。更に、休憩場所がいっぱい、特にタータンチェックのソファーがナイス!!ちなみに、この日3箇所目の美術館のため、このソファーはフル活用させて頂きました!!(^_^;)チラシに「心なごむ風景画や人物画を、ごゆっくりご堪能ください。」とありましたが、はい、存分にご堪能させていただきました~。ずばり、目に優しい緑豊かな展覧会でした。V(○⌒∇⌒○) ルンルン

  • 図録:2000円
  • 音声ガイド:500円

Bunkamuraザ・ミュージアム(http://www.bunkamura.co.jp/)作品リストあり

 

表裏

【新潟展】 新潟市美術館:2005年9月16日~10月23日
【東京展】 Bunkamuraザ・ミュージアム:2005年11月5日~12月25日
【奈良展】 奈良県立美術館:2006年3月18日~5月7日


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Megurigami

りゅうさん、TB&コメントありがとうございました。
私も《苺とクリーム》については、そこから本当に光が出ているかのような錯覚を覚えました。似たような作品に《Picking Flowers on the Bents》があるようですが、こちらも素敵な作品です。
今年の美術展の中ではかなり上位に上がりそうなレベルの高い美術展だと思いますね。
by Megurigami (2005-11-27 14:32) 

りゅう

>Megurigamiさん、こんばんは。
TB&コメントありがとうございます。
スコットランドの画家は知らない人ばかりでしたが、とても面白かったです。本当にレベルの高い美術展でビックリしました♪
光や風を感じられる作品っていいですね。作品の中に自分も身を置いてみたくなります。ここで昼寝したいなぁ~、この風は気持ちよさそうだなぁ~とか、ぽかぽかして暖かそうな光だなぁ~なんて、作品の前ではいつもそんなことばっかり考えています(=^_^=) ヘヘヘ
by りゅう (2005-11-27 20:50) 

りんこう

こんにちは!僕は昨日行ってきました!
近々感想を載せようと思います。
うーん、感想というか、僕の場合雑感になってしまうかと思いますが。
りゅうさんの記事はとても参考になります。また遊びに来ます。
by りんこう (2005-12-03 15:19) 

相変わらず優雅なご趣味ですね♪
私は・・・相変わらずゲーセンのUFOキャッチャーの虜です(笑)
う~んっ きっとこういう絵を見たら、心も和むのでしょうね!
by (2005-12-03 17:46) 

りゅう

>りんこうさん、こんばんわ~
コメントありがとうございます。
感想、楽しみです。v( ̄ー ̄)v ヴイヴイ

>空さん、こんばんわ~
nice!&コメントありがとうございます。
優雅ですよ~♪(へ_へ)V イエイ!
って、思いっきりウソですけど。
映画と違って自分が移動しなければならないので、体力勝負です!!
2~3時間は立ちっぱなしの歩きっぱなし状態がほとんど。
昼食抜きで3箇所ハシゴすると2~3kgはかる~く、軽く!?
(∩.∩)v ブイッ
ちなみにウチにはUFOキャッチャーのぬいぐるみが50個以上あります。
現在はまとめてダンボールの中ですが・・・
(置く場所がねぇ~~...( ;_ _)/|)
by りゅう (2005-12-04 00:46) 

Tak

こんばんは。
いつものようにしっかりとした内容の記事ですねー
展覧会の様子が隆さんの記事でよみがえりました。

そうなんですよね。
プーシキンのように混雑していなくて
イイ感じの展覧会に仕上がってます。
名称をもっとなんとかすれば
お客さんどーんと入ったのに。
(それじゃー駄目か)

TB送らせていただきました。
by Tak (2005-12-07 22:31) 

りゅう

>Takさん、こんばんは。
TB&コメントありがとうございます。
たとえ文化・芸術活動であっても、客商売(ビジネス)である以上、広告戦略(名称・キャッチコピー)は重要ですよね!
プーシキン(朝日)と比較すると一層際立ってしまいます。(* ̄m ̄) ププッ
旅行でも訪れる可能性の低いロシア。そこへモネ、ルノワール、ゴッホといった印象派、しかも『マティスの「金魚」、40年ぶり。』ですから。昨年のマティス展(読売)の盛況ぶりからすれば、ウマイ!!の一言に尽きますね(*^^*) フフ
それに比べると、「印象派」「渋谷」「クリスマス」と要素はあるのに...( ;_ _)/|

ホント、イイ感じに仕上がっていて、観る側としては存分に楽しめていいのですが・・・(^m^ )クスッ
by りゅう (2005-12-08 22:30) 

TaekoLovesParis

りゅうさん、はじめまして。
りんこうさんの所からたどりつきました。
スコットランド美術館展ガイドを読ませていただいてから、展覧会に行きました。
参考になりましたよ。カタログも買わないですみました(*-*)
これからもいろいろご紹介くださいね。
by TaekoLovesParis (2005-12-18 01:13) 

りゅう

>TaekoLovesParisさん、はじめまして♪
nice!&コメントありがとうございます。
この展覧会はプーシキン等に比べ注目度は低いものの、
落ち着いた雰囲気の素晴らしい展覧会だったと思います。
りんこうさんのような自由な発想や閃きのない、だらだらと書き綴っただけの味気ない記事ですが、お役に立てて何よりです(*^^*) フフ
by りゅう (2005-12-18 21:49) 

mari

ばたばたしているうちに、最終日(泣)
風邪を引いたり、寒さが厳しかったりで躊躇したのがいけません。
りゅうさんの解説で楽しませていただきました。
by mari (2005-12-25 12:09) 

りゅう

>mariさん、こんばんわ~♪
師走ですからね~(=^^=) ニョホホホ
それにしてもこの寒さと乾燥はキツイですね・・・
お大事に。(#^.^#) ニョホ
by りゅう (2005-12-25 22:00) 

自由なランナー

あけましておめでとうございます。
うちのブログにコメントをいただいていたのに、ご返事遅れてすみません。
この美術展、しっとりと心に残るものでした。ザ・ミュージアムらしくない感じもしましたが、とてもよかったです。
今年もよろしくお願いします。
by 自由なランナー (2006-01-04 09:05) 

りゅう

>自由なランナーさん、こんにちは。
 &あけましておめでとうございます。
こちらこそ今年もよろしくお願い致します。
(=^^=) ニョホホホ
by りゅう (2006-01-04 15:19) 

naonao

スコットランドのナショナルギャラリーは行きました。ターナーの絵がたくさんあって感激したのを覚えてます。日本って本当に何でも来てるのだなあと感心することしきりです。
by naonao (2007-02-17 22:29) 

りゅう

>naonaoさん、nice!&コメントありがとうございます(^o^)丿
ターナーいいですね~!
海外の美術館にしてみれば、日本での大型企画展は「金のなる木」ですよね。私のように遠出をしないお気楽鑑賞者にはとても貴重な機会です!
久しぶりに図録を開いてみようかな???
by りゅう (2007-02-18 15:33) 

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