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プーシキン美術館展 [05展覧会感想]

19日に「プーシキン美術館展シチューキン・モロゾフ・コレクション」を観に行きました。ロシア・モスクワのプーシキン美術館が世界に誇る「シチューキン・モロゾフ・コレクション」が本格的に披露されるのは、日本では初めてのことだそうで、この展覧会のために、印象派からマティス、ピカソまで、19世紀半ばから20世紀初頭のフランス近代絵画を代表する巨匠たちの一級作品が厳選されたとのこと。

~展示構成~
「印象主義 モネ、ルノワールとその周辺」「セザンヌと新印象主義」「象徴主義 ゴーギャンとゴッホ」「ナビ派とアンティミスト」「マティスとフォーヴィスム」「フランス近代版画 マネからピカソまで」「ピカソとキュビスム」

まず、ピエール=オーギュスト・ルノワール《ムーラン・ド・ラ・ギャレットの庭で》《黒い服の娘たち》。いきなりルノワール、何か飛ばしてるな~って感じです。《ムーラン~》は青色、緑色の使い方がとても綺麗で、和やかな雰囲気が伝わってくる暖かい作品。オルセー美術館の《ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会》と密接な関連性があるそうで、この中の二人はオルセーの作品にも描かれているとのこと。(ちなみに左側の男性はモネだそうです)《黒い~》は繊細で透明感のある肌がとてもきれいな作品。穏やかで優しい、しっとりと心が落ち着く作品。(落ち着いた雰囲気の中でジックリと堪能したかった・・・)この作品も青色がポイントかも。ルノワールの温かく優しい作品に対し、エドガー・ドガ《写真スタジオでポーズする踊り子》は、「静まり返った室内の、張り詰めた硬い空気が感じられる」とでも言うべき緊張感のある作品。デッサン力に優れたドガならでは。ドガはこの作品のみ。もっと観たかった・・・

やっぱり、落ち着くね~~!ピサロの作品を観ているとなんかホッとする。

カミーユ・ピサロ《オペラ大通り、雪の効果、朝》《エラニーの秋の朝》という偶然にも!?ともに朝を描いたものですが、色彩は全く異なるもの。《オペラ~》は建物や通りの様子は点描で空や雲は印象派的な手法のよう。行き交う馬車や人々は軽快なタッチで描かれており、落ち着いた中にも動きが感じられ、重くなりがちな冬の情景が適度に軽く感じられる。「さぁ、寒いから急ごう!」といって足早に立ち去るように。この作品の色使い、馬車や人の描き方をフリッツ・タウロー《パリのマドレーヌ大通り》と比べながら観るととても面白いです。そして大好きなエラニー・シリーズ。この《エラニー~》はすっきりと爽やかな秋の朝って感じですかね~。ともに晩年の作品で様々な技法を駆使したとても奥行きのある完成度の高いものだと思います。それにしても、ピサロってあまり人気が無いのかなぁ~、横目でサァ~ッと観て次の作品へと流れていく人が多く、ピサロ好きとしては、ジックリと存分に楽しむことが出来ました!!v(^。^*)ランランラン♪ちなみに《エラニー~》はシスレー《オシュデの庭、モンジュロン》と比べながら観るととても面白いです。点描を得意とした画家として有名なポール・シニャック《サン=トロペの松ノ木》、版画《フリッシンゲンの船》《調和の時代へ》、アンリ=エドモン・クロス《自宅の周辺(家の近所)》といった作品も見応えがあって面白かったです。

クロード・モネ《白い睡蓮》《ジヴェルニーの積みわら》はチョット物足りないというか、期待していたほどのものではなかった・・・まず、《白い睡蓮》は大胆な力強い筆使いと緑の濃淡が特徴で、睡蓮の花のピンクや紫がアクセントとなっているもの。ポーラ美術館の《睡蓮の池》のほうがコントラストは弱いものの、とても細かく丁寧に描きこまれていて上品で繊細な感じがする。これは人それぞれの好みでもあり、また、私の場合はその時の気分による部分も多いので・・・(ポーラ美術館の時は感動してその場からなかなか動くことが出来なかったのに対し、今回は混雑で作品に近づくことさえ出来なかった・・・頑張っても前から3番目だし《ジヴェルニー~》は積みわらそのものより、バックに描かれているポプラ並木のほうが面白かった!!ともにポーラ美術館の《睡蓮の池》《ジヴェルニーの積みわら》と並べて鑑賞したい作品。図録には大原美術館の《積みわら》も紹介されているのでこちらも並べて観たいですね!!

ポール・セザンヌ《池にかかる橋》《サント=ヴィクトワール山の平野、ヴァルクロからの眺め》はともに興味深い作品でしたが、混雑で作品に近づくことが出来ず、観るというより眺めるという感じで細かい部分はよくわからなかった・・・《池にかかる橋》は図録の解説によると「・・・もしも橋が描かれていなかったらほとんど抽象画に近い印象を与えたであろう。かろうじて空間が示唆され、現実と反映像の区別も微妙につけてはいるものの、全体を彩色された平面と見なすこともできる。幾何学的な形の筆触は20世紀のキュビスム絵画を予告する側面もり、大胆な作品として興味深い。・・・絵筆の痕跡や色の塗り方がよくわかるため、セザンヌの具体的な制作方法を知る上でも貴重である。」とのこと。セザンヌの斜めのタッチは面白いです。観ていて飽きがこない!でもよく観れなかった・・・《サント~》は30点以上描かれたこのモチーフのうち初期のころの作品だそうです。ノンビリと優雅な感じ。会場の混雑に対し、「我、関せず」って感じです。

今回、唯一感動した作品、《白い服の婦人》

ポール=セザール・エルー《白い服の婦人》はモネの《日傘をさす女》に似た感じのものですが、大胆な構図の中に光や風を感じることができるとても綺麗な作品。白色と青色のコントラストは見事。多分、この画家の作品を観るのは初めてだと思います。版画《毛皮の帽子を被った女》もとても綺麗な作品(綺麗な人)で、ともに注目度が低いこともあり、ジックリと存分に観ることが出来ました!!( ̄^ ̄)V ブイ

フィンセント・ファン・ゴッホ《刑務所の中庭》はイマイチよく分からない作品。額縁が目がまわりそうでチョットね~・・・(^_^;)サン=レミで入院していた頃の作品だそうで、本の挿絵を忠実に再現しつつ、一部オリジナルの解釈を加えたもののようだ。それにしても、何故に刑務所をモチーフに選んだのか???中心の人物はゴッホの比喩的な自画像ではないかとの解釈があるそうだが・・・

ウジェーヌ・カリエール《母の接吻》はとても幻想的で柔らかい優しい作品。見応えあります!!カリエールは全体的に暗い色彩(ほとんどクロ)にもかかわらず、作品から受ける印象はとても温かく優しく感じる。特に《母の接吻》は素晴らしい!!それに対し、エドゥアール・ヴュイヤール《室内》は画面全体が装飾的でとても細かく描き込まれている綺麗な作品。人物が室内に溶け込んでいて、人物そのものが装飾のようでとてもキラキラとした感じがするが、人のぬくもりのような優しさ、温かさを感じることができる。ルノワールは印象派の技法では人物が風景に溶け込んでしまうということで様々な研究を繰返していたが、このようにあえて人物を溶かし込むというのもその一つの発展型かも。ピエール・ボナール、アンリ=シャルル・マンギャンもワクワクする作品ばかりで、見応え十分!!

アンリ・マティス《金魚》《白い花瓶の花束》は、まず、《金魚》の第一印象は、「ふ~ん・・・」って感じ。予想以上に大きな作品で、ピンクや紫、緑はとても鮮やかで綺麗。金魚の赤色がコントラストとなって全体を引き締めている。また、不思議な空間構成はとても面白く魅力的で、なかなかその場を離れることが出来なかった。でも・・・金魚自体は如何なものかと・・・金魚を飼っている者としてはチョット・・・(ちなみにウチには2cm~25cm超まで、100匹以上の金魚がいます。ウチの金魚の方がカワイイ~!!←単なる親ばか次に《白い~》は赤い花がアクセントとなってとても立体感がある。丸い花瓶も近くで観ると平面的だったのに離れてみるととても立体的に!!鮮やかな色彩とその大胆な構図はやっぱりマティスだなぁ~って(^-^ ) ニコッ

アンドレ・ドラン《水差しのある窓辺の静物》はセザンヌのような・・・マティスのような・・・それでいてキュビスムのような・・・とても不思議な作品でなかなか面白い作品でした。ジョルジュ・ブラック《ラ・ロシュ=ギュイヨン城》、パブロ・ピカソ《女王イザボー》といったキュビスムの作品も面白かったです。一応、原型をとどめていますし・・・(^_^;)

さすが、大手新聞社主催の印象派展。しかも巨匠ウィークの土曜日。朝イチ(9時15分頃かな?)で観に行ったのに大混雑!!(チケット売り場は誰も並んでいなかったのに・・・)しかも、今年鑑賞した展覧会では一番マナーが悪かった・・・(年齢層が高いせいか、遠慮が無い・・・)割り込みはいつものこととして、肘打ちは勘弁してくれよっ!!(怒)会場内には座る場所があちこちに設けられていて並び疲れて休憩するにはいいのですが、どうせなら座る場所増やすより、作品の間隔を取るなどの工夫が欲しかったです。(作品数少ないんだし・・・)特にモネ、セザンヌ、版画の展示室の混雑状況は酷かったです。版画なんてほとんど観れないし。ちなみに鑑賞を終え展示室を出ると、入場制限がかかっていました。
作品は基本的に個人コレクションなので素晴らしい作品が揃ってはいるものの、展示構成にイマイチ統一感というか流れが感じられない。事前にHP等でチェックした情報(画家、作品)より、今までそれほど気にしていなかった画家や初めて見聞きする画家の作品の方がとても魅力的で、掘り出し物いっぱいの展覧会だった。自分の興味や趣向が変わっていくというか、広がっていく過程を自分で実感することのできる不思議な展覧会でした。
もし、もう一度観に行くことができるとすれば、絶対、平日の朝8時50分頃に美術館に着くようにスケジュールを組みます。間違っても、土・日には行きたくない(行かない)。

  • 図録:2000円(税込)
  • 音声ガイド:500円(税込)

東京都美術館(http://www.tobikan.jp/

公式HP(http://www.asahi.com/pushkin/)割引券&図録の通販あり

 

表裏

 

「巨匠ウィーク」

期間中は毎日先着1000人にポストカードのプレゼントだそうです。

←モネ《白い睡蓮》のポストカード

    ~巨匠ウィーク~

ピカソ:10/25~10/30
マティス:11/1~11/6
モネ:11/15~11/20  

 

 

【東京展】 東京都美術館:2005年10月22日~12月18日
【大阪展】 国立国際美術館:2006年1月11日~4月2日


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コメント 14

mari

りゅうさん、こんばんわ。
すごい混雑だったでしょう。私は、少し時間をずらしていきましたが、
最後は駆け足でした。版画はユックリ見られませんでした。
どうにかならないですかね、都の美術館!
せっかくの展覧会、余韻を楽しみたいですよね。
by mari (2005-11-22 00:58) 

りゅう

>mariさん、こんばんわ。
ビックリしました!!まるでデパートのバーゲン・・・否、スーパーのタイムセールのようでした。「版画」、実はまともに観たのは半分程度、後は眺める程度にしか近づけませんでした。
美術館を出た時、木枯らしが一層冷たく感じました・・・...( ;_ _)/|
それにしても、素晴らしい作品がいっぱい!!シチューキン&モロゾフって凄い人達ですね~、「センスがいい!」って、こういうことかなぁ。
TB&コメントありがとうございました。
by りゅう (2005-11-22 01:39) 

はむこ

りゅうさん、はじめまして!
私も先日プーシキン美術館展見てきました。お昼頃並んだんですけど、
それでも入場制限がかかっていました。観覧中、私も人混みの中での
圧縮劇にフラフラして、壁際の椅子で休憩しながら見た口です。あれでは
誰もが、もう少しゆったりとした場内構成を願ってしまいますよね。笑
by はむこ (2005-11-22 21:31) 

りゅう

>はむこさん、はじめまして&ご訪問ありがとうございます!
凄い混雑でしたね~、もう少しゆったりと鑑賞したかったです。でも、展示内容を考えると混雑も仕方ないのかなぁ~なんて。(^m^ )クスッ
都美はミュシャ展以来でしたが、あの時もかなり混んでいました。企画が素晴らしいのか、場内構成など美術館の運営に問題があるのか・・・...( ;_ _)/|
帰りにプラド美術館展のチラシがあったのでもらってきましたが、これも間違いなく混むでしょうね!!ε=(>ε<) プッー!
by りゅう (2005-11-23 00:03) 

りんこう

こんばんは!コメントありがとうございました!
僕は平日に行ったのですが、その時もかなり混んでいました。
入場制限ですか…。もうそれだけで絵画鑑賞の意欲が萎えてしまいそうです。
シチューキン、モロゾフはそんな絵画に囲まれて暮らしていたのですね。
僕もそんな環境で鑑賞したいなあ。なんて絶対ムリですけれどね。ハハハ。
by りんこう (2005-11-23 21:08) 

りゅう

>りんこうさん、こんばんは。
コメントありがとうございます。
やはり平日でも・・・( ̄~ ̄;) ウーン
気分転換&息抜きのために絵を観に行ったのに…...( ;_ _)/|
北斎・・・どうしようかなぁ~。
オイラも素晴らしい絵画に囲まれて暮らしたいです!!
\(^o^)/ わーい
by りゅう (2005-11-24 00:36) 

Tak

こんにちは。
これだけの記事書くのには
相当な時間がかかったのではないですか?
それとエネルギーも!!
素晴らしいですね。
これ、そのまま公式サイトにでも載せてもらえそうです。
by Tak (2005-11-26 13:48) 

りゅう

>Takさん、こんばんは。
TB&コメントありがとうございます♪
「会場の雰囲気や作品を前に思ったこと、感じたこと」を、「月日が経過して図録を開いた時にこれを読んで思い出しながら楽しめれば…」と思い、展覧会の余韻に浸りつつ書いていたら、タダでさえ下手くそな文章なのにだらだらと…...( ;_ _)/|
図録では色合いが異なる場合もあり、また照明の度合いも異なるので、自宅で寛ぎながら見る図録と会場で観るのとでは全く印象が変わりますね。最近はそのギャップを楽しんだりしています♪
Takさんのように魅力的で素敵な記事を毎日書かれている方のほうがとっても素晴らしいですよ!!私には絶対真似出来ません・・・なんたって月5,6件ですから(^^*ゞ ポリポリ
ちなみに、文字の打ち込みは速いほうなので、実はそれほど時間がかかっていないんですよ~(=^^=) ニョホホホ
by りゅう (2005-11-27 21:00) 

自由なランナー

こんにちは。
私もやっと先週見てきました。幸い平日にいったので、ゆっくり見られました。
私としては、ちょっと物足りなかったかな、という印象です。
うちのブログでも記事にしたので、TBさせてください。
by 自由なランナー (2005-12-06 09:21) 

りゅう

>自由なランナーさん、こんばんは。
TB&コメントありがとうございます♪
やはりこういった展覧会は平日ですよね!!
確かに物足りなさはありましたが、ポール=セザール・エルーやカリエール、エドゥアール・ヴュイヤールといった新たな出会いや発見があり、なかなか興味深い展覧会でした。
素晴らしい展覧会には違いないのですが、もう少し作品構成に統一感や流れがあると凝縮感がでて締まりのある展覧会になるのになぁ~という印象を受けました。(=^_^=) ヘヘヘ
by りゅう (2005-12-06 22:40) 

HIRO

プーシキン美術館展、私は行っていません。このところ忙しくて平日は無理、土日祭日は混むのは確実、好きな美術鑑賞でいやな思いをしたくなかったので行きませんでした。
本当は観たかったですよ。でも、もうすぐ終わりですね。
by HIRO (2005-12-09 15:55) 

りゅう

>HIROさん、コメントありがとうございます。
そうなんですよね~、私も「北斎展」断念してしまいました。
微妙な問題ですが、「美術鑑賞」と「混雑」を天秤にかけると…ウーム (; _ _ )/
フィリップス・コレクション展やポーラ美術館展の流れから、
HIROさんの感想を楽しみにしていたので残念です。
開館時間の延長や以前行なわれていた夜間開館日の再開など、
今後の運営に期待したいですね!
by りゅう (2005-12-09 23:28) 

rossa

りゅうさ~ん☆こんばんは☆ほんとにいつもながら、臨場感あふれる文章に☆感動~☆楽しい展覧会☆ですね☆ほんと!まあ、こんなにすごい絵が目白押し。。ってなかなかないように、思います。何度行っても楽しいです☆りゅうさんのBLOG読んだら、また、行きたくなってきました☆
by rossa (2006-02-24 21:38) 

りゅう

>rossaさん、こんばんは。TB&コメントありがとうございます。(=^0^=)v
大阪展は開催期間も長く比較的余裕を持って鑑賞できるようですね。
東京展は異常な混雑ぶりで、2回目は断念してしまいました ウーム (; _ _ )/
モネ、セザンヌ、マティスの《金魚》…もう一度みたい作品がいっぱいです!!
by りゅう (2006-02-25 01:22) 

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