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ドレスデン国立美術館展 [05展覧会感想]

27日の午後、ドレスデン国立美術館展-世界の鏡を観に行きました。この展覧会は、ドレスデンに居城を定めたザクセン選帝侯のコレクションを7つのセクションでみるもので、16世紀から19世紀のドレスデンにおける芸術潮流に焦点を合わせ、ドレスデン国立美術館のコレクションから選りすぐられた約200点によりその全貌を紹介するものだそうで、国際交流によってもたらされた多彩な作品を通じて、万華鏡のように各国の文化を映した「世界の鏡」としてのドレスデンの姿を浮き彫りにするということです。

~展示構成~
Ⅰ.ドレスデンの美術収集室(クンストカマー) Ⅱ.オスマン帝国-恐怖と魅惑 Ⅲ.イタリア-芸術の理想像 Ⅳ.フランス-国家の表象と宮廷文化 Ⅴ.東アジア-驚嘆すべき別世界 Ⅵ.オランダ-作られた現実 Ⅶ.ドイツ-ロマン主義的世界観

まず、集光鏡や地球儀、三角定規といった科学計測機器。これらは、ドレスデンの始まりが美術作品ではないこと、そして「美術とは何か」を考え、反証的にコレクションの特徴が浮き彫りになってくるそうです。これらの展示は、文系出身で物理学というものは全く分からないので、ただ漠然と眺めているという状況でした。ただ、最初の展示品である《集光鏡》はいきなりの馬鹿でかい物体という感じで、圧倒された・・・展示室で一際輝いていたのが《「トルコ風」の手洗水差しと手洗盤》というマイセンのとても優雅な作品。その圧倒的な存在感と華麗さは見事。周りにいた人たちも、ため息混じりに「マイセンだぁ~」とか、「きれい・・・」といいながらうっとりとしていました。

ベルナドット・ベロット《ヴェローナのアーディジェ川》《エルベ渓谷の彼方にピルニッツとピルナを望む》はいずれも横幅が2m以上の大きなもの。《ヴェローナ~》は写実的で硬さも感じられるが柔らかさ温かさも感じる。左右の両端から斜めに作品を観ると、全く異なった雰囲気のとても興味深い作品。もちろん、距離をおいて全体を見渡すのもいいが、人が多くて厳しい・・・《エルベ渓谷~》はとても安定感のある落ち着いた優しい絵。のどかな田園風景、特に遠景や空、大気の表現は素晴らしい。この作品は現実のものではなく、様々な眺望をひとつの非現実的なヴェドゥータ(景観図)に統合しているものだそうです。それだけ、完成度が高いということでしょうか。

《ローズカット・ダイヤモンド装身具一式》、勲章や留め具、剣、鞘等、タイトルの通りダイヤモンドによる装身具の一式です。大小様々のダイヤで飾られた素晴らしい輝き。そして、ものすごい人だかり。宝石店のショーケースのようで国立西洋美術館のイメージとはちょっと違うような・・・多分、デパートの宝石展やダイヤモンド・フェアならこれだけで十分に人を集められるでしょう。

マイセンと中国、日本の比較展示はなかなか興味深かったのですが、展示場所が狭いうえに、満員電車状態でじっくりと鑑賞するという状況ではなかった、残念・・・《伊万里焼壺》の5点展示はとても素晴らしかった。まさか、ドイツの美術展で日本の名品、それも展示作品の中でもトップクラスの素晴らしい作品を観ることが出来るなんて・・・

目玉じゃなかったの?

この展覧会のメイン、ヨハネス・フェルメール《窓辺で手紙を読む若い女》。チラシ、TVCM、雑誌等の宣伝文句ともなっていたフェルメール。とんでもない所に展示されていた・・・( ̄□ ̄|||)がーーん!事前の情報で、意外なところに突如現れるという感じのイメージを持っていたが、まさかこんなところに・・・いかにも、『この展覧会はフェルメールの作品を見せる展覧会ではありません、ドレスデン国立美術館展です。あくまでも、フェルメールはその収蔵品の一つにすぎません』とでもいうかのよう。フェルメールで客を集めておいてさっ・・・(-_-;)人が多くてなかなか観れないし、じっくりと鑑賞できる雰囲気ではないし。ただし、作品には近づくことが出来るので、それなりに楽しむことが出来ました。そして、もう一つのウリ、レンブラント《ガニュメデスの誘拐》はイマイチだった。(やっぱり、レンブラントは肖像画家だな・・・)でも、鷲の翼など、緻密で迫力のある表現は素晴らしいと思います。

ヤーコブ・イサークスゾーン・ファン・ロイスダール《城山の前の滝》、99×85㎝という大きなもので、とても素晴らしい作品。この安定した構図と立体感のある雲がなんともいえない。全体的に静であるのに、滝(なだらかで、ほとんど川)の水しぶき、水の流れによる動のコントラスト。雲も静かにゆっくりと流れているようにも感じられる。風景画好きにとっては、この作品を観ることが出来ただけでも、この展覧会に足を運んだだけの価値があるというもの。

ヨハン・アレクサンダー・ティーレ《フラウエンシュタインの城と町》《アウグストゥス橋のあるドレスデンの眺め》も横幅が150㎝以上の大きなもので、穏やかな優しい作品。《フラウエンシュタイン~》は鮮やかな明るい色彩が特徴のもの。《アウグストゥス橋~》は霞んだ感じの儚さのある叙情的なもの。カスパー・ダーヴィット・フリードリヒ《エルベ渓谷の眺め》は、ロマン主義の寂しさの漂う作品。そして、《月を眺める2人の男》「ドレスデン絵画館が所蔵するフリードリヒ作品の中で最も有名なものであるばかりか、風景画に深遠な自然観、世界観を開示する、非常に独特な流儀をほとんど模範的な明快さで示しているという点で特筆される」そうだ。作品は小さいがなかなか見応えのあるもの。ヨハン・クリスティアン・クラウゼン・ダール《満月のドレスデン》は78×130㎝という大きな夜景画。暗い色彩の中に温かさを感じることのできる素晴らしい作品。水面に反射する満月の光がとても美しい。エルンスト・フェルディナント・エーメ《サレルノ湾の月夜》、こちらも夜景画。しかし、この作品は全体的に明るい色彩が特徴の優しい作品。いずれの作品も月が一部、雲に隠れている。いくら月夜でもこんなに綺麗に水面に反射するのかとその描写に疑問を感じる。素晴らしい作品には違いないのだが・・・

集光鏡、地球儀、ダイヤモンドの装身具、甲冑、サーベル・・・展覧会全体の感想としては、東博でやれよっ!!!という感じの内容でした。たくさんの作品を無理やり展示室に詰め込んだという印象で、全体的に狭く、落ち着きのない感じがしました。絵画が少ないため、絵画好きには物足りなさを感じるのではないでしょうか。但し、作品の質は高く、また、風景画が多いので風景画好きにとってはそれなりに満足のいくものでした。(肖像画好きには厳しいかも・・・「フェルメールを観るために来たんだっ!」と開き直るほうがいいかも。)

夏休み最後の週末ということもあり、とても混んでいた。やはり、夏休み明けの平日、又は夜間開館日ですかねぇ~。フィリップス・コレクション展との兼ね合いでこの時期になってしまったが、9月に入ってから観に行くべきだった・・・(;-_-) =3 フゥ 

図録はカタログ編を購入しましたが、デカイ。しかも、とんでもなく重い。読み応え十分(多分)。ちょろっと開いた程度でほとんど読んでいないのですが、丁寧に解説が付されているようです。音声ガイドは借りていませんが、あの混雑を考えるとガイドを聞きながら時間をつぶす(一部の展示品では、順番待ちの状態)方がいいかもしれません。

  • 図録:2500円(税込) ※カタログ編 
  • 図録:1000円(税込) ※エッセイ編
  • 音声ガイド:500円(税込)

国立西洋美術館(http://www.nmwa.go.jp/index-j.html
公式HP(http://www.dresden-ex.jp/

 

 表裏

【兵庫展】 兵庫県立美術館:2005年3月8日~5月22日
【東京展】 国立西洋美術館:2005年6月28日~9月19日


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コメント 6

mari

りゅうさん、こんばんわ~。
TB&コメントをありがとうございました。
この展覧会は、出来たら分けたほうが良かったですね。
”世界の鏡”で、くくられたから、フェルメールで、呼んでおきながら!と
憤慨して帰ってきました。友人もかなり怒っていました。
焼き物は素晴らしかったですね。それでも、フェルメールが見られて良しと
しなければいけなそうです。
by mari (2005-08-29 23:44) 

りゅう

>mariさん、こんばんわ~
フェルメールは、四重、五重に人が集まっていました。(アノ場所でですよ…)
手紙の内容は勿論、窓ガラスの姿(髪)も気になりましたが、手前のフルーツも気になりました(美味しそうで…ε=(>ε<) プッー!)。やっぱり静物画も上手いんだろうなぁ~って思いながら、居座っていました♪
昨年の都美のフェルメールのように、柵で遮られていないだけ良かったのかもしれませんね。
TB&コメントありがとうございました。~(m~ー~)m
by りゅう (2005-08-30 02:36) 

Tak

こんばんは。
コメント&TBありがとうございました。

フェルメールいきなり焼き物の後ろに展示してありましたね。
私も初めて行った時は「え~」と思いました。
レンブラントほどではないにしても
もうちょっと飾る位置を・・・・あそこ暗いんです、また。

神戸ではとってもいい場所に展示してあったそうですよ。
by Tak (2005-08-30 20:23) 

りゅう

>Takさん、こんばんわ~
フェルメール、本当に「いきなり」の対面で、危うく流すところでした…(^_^;)
(感動というより、驚きと焦りの方が大きかったです)
昨年の都美は確かに酷かったですよね~、人は流れないし、グッズ売り場が込んでいると皆さん戻ってくるし…それに比べるとまだ良かったのかもしれません。
その時の図録を見ると、ドレスデンは《取り持ち女》という作品も所蔵しているみたいですね。どうせなら、両方観たかったなぁ~
(欲張りすぎですよね…(*^^*) フフ)
TB&コメントありがとうございました♪
by りゅう (2005-08-31 01:52) 

インフォシェルジュ

りゅうさん、こんにちは。

コメント&TB有り難うございます。
充実したレビュー、楽しませていただきました。

フェルメール良かったですね!
でも確かにあんな場所に突然フェルメールが登場してびっくりしました。
次の部屋の明るいところに一緒に展示してあげてーっという感じでしたね。

私もTBさせていただきますね!
by インフォシェルジュ (2005-09-10 18:38) 

りゅう

>インフォシェルジュ さん、こんばんわ~
フェルメール、本当にすばらしかったです!!
コメントありがとうございました。
前回もでしたが、どういうわけかTBがうまく反映されていません。
ごめんなさい。(未だにβ版なのですいません。)
リンクをさせていただきます。
インフォシェルジュさんのドレスデンの記事はこちらです。
http://infocierge.livedoor.biz/archives/50030236.html
by りゅう (2005-09-10 22:35) 

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