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ポーラ美術館の印象派展 [05展覧会感想]

9日に、ポーラ美術館で開催されている「開館3周年記念展 ポーラ美術館の印象派 モネ、ルノワール、セザンヌと仲間たち」を観に行きました。

この展覧会は、開館3周年を記念して、コレクションの中心となるフランス印象派の作品を、画家たちの交流に焦点を当てた構成で紹介するものだそうです。

 ~展示構成~
「マネ」「モネとシスレー」「セザンヌ」「モネとロダン」「ルノワール」「ドガとトゥールーズ=ロートレック」「ゴーガンとゴッホ」「ピサロと最後の印象派」

アルフレッド・シスレー《ロワン河畔、朝》ウジェーヌ・ブーダン《ダウラスの海岸と船》は、構図がシスレーみたいだったけど、空の青さ、雲の描き方を観ていると、やっぱりブーダンだなぁ~って感じの作品。《トリスタン島の眺望、朝》は海の爽やかな青さ、手前の岩のごつごつとした存在感がおもしろい作品でした。アルフレッド・シスレー《サン=マメスのロワン河》は、雲の薄塗りの優しい描き方と厚塗りの絵の具で早いタッチで描かれた手前の草花との対比が絶妙な遠近感を出している、なかなか面白い作品。シスレーの作品は暗い色彩のものが多いとイメージしていたので、明るい色彩のものは新鮮味があって観ていて楽しい。《ロワン河畔、朝》も明るい色彩の優しい作品。一瞬、パステルか水彩かと思った。

光や風、時間を感じることが出来るモネの作品は二箇所に分けて展示!!

クロード・モネ《グランド・ジャット島》まず、『モネとシスレー』の展示。クロード・モネ《サン=ラザール駅の線路》は、ぱっと観はごちゃごちゃ。でも、じっくりと観ていると風を感じられる作品。まさに、一瞬を捕らえた素晴らしいもの。《散歩》はあの有名な《日傘をさす女》を連想させる。こちらの作品では、光の優しさ温かさを感じることが出来るのではないでしょうか。インパクトは弱いですが、この美術館のイメージにとても合っていると思います。《アルジャントゥイユの花咲く堤》は昨年の印象派展で一目ぼれしたもの。やはり、存在感が違う・・・《グランド・ジャット島》は爽やかな空の青さと白い雲、それをうつす水面が画面を大きく占める綺麗な作品。手前の木の枝、葉による遠近感も面白いが、その描き方に注目。跳ねるようなタッチで葉が描かれていて、ブリヂストン美術館の《睡蓮》に描かれた木の枝や葉にとてもよく似ている。

クロード・モネ《国会議事堂、ばら色のシンフォニー》次に、『モネとロダン』の展示。《セーヌ河の日没、冬》は、アノ《印象、日の出》を連想させるとても素晴らしい作品。タイトルの通り、こちらは夕日ですが・・・《ジヴェルニーの積みわら》は、明るい日差しを感じることが出来、きれいだけど写実的過ぎてイマイチ。埼玉県立近代美術館の作品の方が面白みがある。そういう意味では、《国会議事堂、バラ色のシンフォニー》はとても面白みがある作品でした。はっきりいって何が描かれているのかよくわからない。でも、その形から国会議事堂なんだぁ~って辛うじて認識できるという感じ。ここまでくると対象物ではなく光による調和とコントラストが主題なのでしょう。観ているととても引き込まれる作品、時間を忘れてしまいそうなほど。《ルーアン大聖堂》も。近くで観ると何がなんだかわからない・・・はっきり言って、ごちゃごちゃ、めちゃくちゃ(´ρ`)ぽか~ん。離れてみると、大聖堂が浮かび上がってくる・・・「すごいっ!!」の一言。このあたりの作品群はまさに、光のシンフォニーという感じでしょうか。《サルーテ運河》は、さらにコントラストを強くした感じ。チョット、フォーヴみたいで斬新な感じ。楽しみにしていた作品のひとつ《バラ色のボート》。とても大きな作品でビックリ・・・(圧倒されたとも言う)じっくりと観ていると自分を見失う・・・《睡蓮の池》《睡蓮》も今回楽しみにしていたもの。《睡蓮の池》はテレビ等では何度か観たことがある作品でしたが、やはり実物は違う・・・確か、この橋の上にあったのは藤棚だったと思うので、この画面左上のものがそうでしょう。絵の具の凹凸がとてもきれいにしだれた藤のつるや葉の感じを出していて本当に素晴らしい。(※他の睡蓮の作品や写真からすると、これは藤ではなく、池のほとりにある『柳』のようです・・・(ーー;)いずれにしてもしだれ具合、葉の質感は見事! 8/28訂正)そして、ここでは脇役となっている睡蓮もとてもきれいで優しい。睡蓮の花の白や赤がアクセントとなり、作品に奥行きを出している。そのすぐ隣に《睡蓮》《睡蓮の池》から、睡蓮の花が咲いている様子を切り出してきた(クローズ・アップした)みたいで面白い展示だった。この《睡蓮》も昨年の印象派展で出展されていたもの。その時は展示室が暗くてイマイチ見栄えがしなかったが、今回はちょうど良い明るさで観易かった。ただ、展示場所がチョット厳しいかな・・・(後ろにロダンの彫刻があるので距離をおいて観ることが出来ず、また、後ろがない分、人が集まると狭くて、ゆっくりと観るのに気が引ける・・・)

ポール・セザンヌ《プロヴァンスの風景》ポール・セザンヌ《宗教的な場面》。セザンヌの宗教画は初めてです。1860-1862年ということなので、自らの方向性を模索している段階でしょうか。モンティセリの影響をうかがわせる作品だそうです。《プロヴァンスの風景》は今回の展覧会の図録の表紙になっているもの。明るく軽やかな感じがして、プロバンスの陽気な雰囲気が漂う優しい作品。《4人の水浴の女たち》も軽い感じのもの。斜線のようなタッチがとても面白い。《アルルカン》はなんとも不思議な作品。背景はセザンヌの静物画によくあるような感じ。メインの人物は画面に収まりきれていない・・・(これは日本画の影響らしい・・・)

今回の一番の目的、《レースの帽子の少女》

ピエール・オーギュスト・ルノワール《レースの帽子の少女》ピエール・オーギュスト・ルノワール《アネモネ》は花びらの質感もさることながら、その花瓶が見事。静物画はよくわからないので、どうコメントしていいのか分かりませんが、どっしりと構えた感じで、安定感のある存在感十分の作品。《水浴の女》はイタリア絵画のような優しいもの。《髪かざり》は日常の一場面を切り取ったかのようでとても自然な感じ。ドレスの光沢の描き方、透通るような女性の肌の質感がとても素晴らしい。そして、《レースの帽子の少女》。思ったより、小さい作品だったので、最初は「えっ!!」って感じだったけど、じっくりと観ていると「これくらいがちょうどいいのかなぁ~」なんて。正直言って、この作品に言葉は要らない。実際に観ればその素晴らしさ、存在感の大きさはご理解いただけるのではないでしょうか。あえて言うなら、この作品のためだけに箱根に足を運んでも、(おそらく)後悔はしません!!

エドガー・ドガ《ルアール夫妻の肖像》エドガー・ドガの、パステルによる踊り子を描いた一連の作品もいいものが揃っていました。(展示替えもあったそうです)《ルアール夫妻の肖像》はとても興味深い作品。ドガのデッサン力も素晴らしいのですが、絵そのものより、絵の中の様子が気になる・・・NHKの新日曜美術館で、山根さんが「んなぁにを、話してるんでしょうかね~」といったのがとても印象的。番組では、深刻な話をしているとか、いろいろ推測して愉しんでいましたが、これもまた、絵の愉しみ方のひとつ。(絵の中の様子を想像するのって結構楽しいです!!)図録の解説では「・・・ドガの中学校以来の友人で普仏戦争従軍の時も同じ砲兵隊に属し、アマチュア画家として印象派展にも出品していたアンリ・ルアールの4番目の息子、美術評論家のルイ・ルアールとその妻を描いている。このルアール婦人もドガの友人であった画家アンリ・ルロルの娘であり、ドガは彼らを幼い頃から知っていて、うちとけた、くつろいだ表情がとらえられている。」とのこと。ぜんぜん深刻な話じゃないじゃん・・・

初めて、ゴーガンの作品を良いと思った!!

ポール・ゴーガン《白いテーブルクロス》は、とても素晴らしい静物画。その構図、色彩、全体のバランス、いずれも素晴らしいと思います。特に注目したのは、デキャンタ(カラフェ)。中には赤ワインが入っているのですが、ガラス製のデキャンタの描き方、特にガラスに反射する光や中身(赤ワイン)の透通るような透明感と深いルビーの微妙な感じ(おいしそう♪o(*^^*)oわくわく)タイトルにあるテーブルクロスも、とても繊細かつ大胆な感じがしてナイス!!《ポン=タヴェンの木陰の母と子》は、絵の具の置き方とか筆の運び方とかがピサロっぽい感じがして面白かったです。

カミーユ・ピサロ《エヌリー街道の眺め》《エラニーの村の入口》《エラニーの花咲く梨の木、朝》は、いずれもピサロ好きにはたまらない素晴らしい作品。これらの作品の前にあるソファーは人気が高く(最後の展示室だからかな???)なかなか座ることが出来なかったのですが、ソファーに座ってじっくりと鑑賞すると、とても幸せな気分になれました。ただし、ピサロは3点のみなので、これを目当てにこの展覧会にくるとちょっと物足りなさを感じるかも・・・ジョルジュ・スーラ《グランカンの干潮》、ポール・シニャック《ブリシンゲン湾》《オーセールの橋》は、いずれも、点描による優しい作品。ピサロも点描を用いていますが、こちらは、オール点描。特に、《オーセールの橋》はカラーチップ(タイル)をちりばめたような綺麗な作品。(点描の作品を観ていると、『ちぎり絵』みたいだなぁ~って、いっつも思う・・・)スーラ、シニャックの作品は大きいものが多いので、毎回のように圧倒される・・・

展示替を含め合計90点余りの展示作品のうち、モネ19点、ルノワール13点、セザンヌ9点、ドガ12点(展示替を含む)というとても豪華な展覧会。特別出展の2点の写真(川崎市市民ミュージアム蔵)以外は全てポーラ美術館の所蔵作品です。(よくもまぁ~、これだけの作品を集められたもんだなぁ~(^^;;; ダラダラ))開館して間もない綺麗なガラス張りの建物、落ち着いた雰囲気でゆったりと鑑賞することが出来る、広い展示室。展示室のソファーには、いたるところに図録が置かれ、好きな時にいつでも読むことが出来、時間を忘れて楽しむことが出来ました。(唯一の難点は遠いことかな・・・)

図録もなかなか面白いです。作品の解説は少ないのですが、画家に焦点をあてた解説で読み物的な感じ。展覧会のコンセプトがとてもよく反映された、内容の濃いもの。さらさらと読めるので、画家の交流関係等に興味のある方にはとてもおすすめ!!あくまでも、所蔵作品による企画展なので、企画に沿った内容で構成されています。(「作品の詳細な解説を希望する方は名作選図録を!」ということなのでしょう・・・)

06年1月2日よりBunkamura「ポーラ美術館の印象派コレクション展」を開催予定だそうで、モネ、ルノワールをはじめとした印象派の巨匠たちを中心に約80点の作品が紹介されるようです。今回の展覧会とどの程度同じ作品が展示されるのかは分かりませんが、《レースの帽子の少女》は展示されるみたいです(HPのスケジュールより)

  • 図録:2415円(税込)
  • 音声ガイド:400円(税込)

ポーラ美術館(http://www.polamuseum.or.jp/

 

表裏

表(※現在配布されているものはこちらです)


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mari

大昔、西洋美術館に、松方コレクションの部屋があり、真ん中に丸いソファが置いてあり、ぐるりと、モネの睡蓮があり、私は、誰もいないのを幸いに、そのソファに仰向けに寝転んで、飽きずに眺めていた若かった時代を思い出しました。
今は、防災用に、防火扉ががっちりあるし、のんびりは出来ないですね。
この美術館は往復を考えると、まだ行かれないです。
by mari (2005-08-17 00:13) 

りゅう

>mariさん、こんばんわ~
いいなぁ~、ソファーで寝転びながらモネの睡蓮に浸るなんて!!
池にプカプカ浮いているみたいで気持ちよさそうですね。(()\\(^.^ ) ドンドン

先日は、たいしたコメントでもないのに
メールでの丁寧なご返事ありがとうございました♪
(=^_^=) ヘヘヘ
by りゅう (2005-08-17 21:55) 

自由なランナー

こんにちは。
ポーラ美術館、すてきな環境で、最高ですね。所蔵品もレベルが高く、良かったです。
また訪れたいミュージアムです。
by 自由なランナー (2005-08-23 07:41) 

りゅう

>自由なランナーさん、はじめまして。
ポーラ美術館、いい美術館ですよね~ (^ー^* ) フフフフ
以前、どこかのHP(ブログ?)に画像が掲載されていたのですが、
今度は、アノ山をもう少し登って(?)「建物全体を上から見たいなぁ~」なんて考えています。(ガラス張りの綺麗な建物なので、天気のいい日に行きたいなぁ~)
TB&コメントありがとうございました。
(=^_^=) ヘヘヘ
by りゅう (2005-08-24 00:59) 

HIRO

コメントとTB、ありがとうございました。

私は、ポーラ美術館印象派展に2度、足を運びました。いつも感じることなのですが、2度目は理解がすすみますね。ポーラ美術館は、リピーター向けの割引制度もあるので、便利です。

横浜在住なので、気の向いたときに高速を飛ばして行きます。御殿場インターチェンジから比較的近いので、これまた便利です。
by HIRO (2005-09-05 09:33) 

りゅう

>HIROさん、はじめまして。
ポーラ美術館の印象派展は何度でも足を運びたくなるような、
本当に素晴らしい展覧会でした。
ドガの作品等に、一部展示替えもあったんですよね~、羨ましいです!
TB&コメントありがとうございました。
by りゅう (2005-09-06 00:48) 

naonao

ポーラ美術館が箱根に出来てからもう何年ですかね?私は出来たばかりのころ行きました。ちょうど箱根の森の美術館のオープンエアスペースでアコーディオン奏者のコバさんの演奏会もあり、それを観て一泊して温泉に浸かり出来たばかりのポーラ美術館に行ったのですが、きれいで本当素敵な美術館でした。ここって他から絵画を借りる必要ないくらい絵画をたくさん所蔵し展覧会をいくらでもできてしまえると聴いてます。すごいですよね!!私もまた行きたくなりました。
by naonao (2007-02-17 21:59) 

りゅう

>naonaoさん、nice!&コメントありがとうございます(^o^)丿
来月から開館5周年記念展が開催されるそうです(^_^)/
「花の絵画」と「エミール・ガレ」の二大企画展とのこと。
(西洋絵画400点を含む約9500点を収蔵しているそうです。)
ココの光ファイバー照明はホント凄いですよね!
昨年のポーラ美術館展(渋谷Bunkamura)で、その凄さを痛感しました。
また行きたくなってきました・・・
by りゅう (2007-02-18 15:23) 

サンフランシスコ人

「展示替を含め合計90点余りの展示作品のうち、モネ19点、ルノワール13点」

ペンシルバニアのバーンズ財団美術館には、ルノワールの作品が200点あります。
by サンフランシスコ人 (2008-01-09 06:23) 

りゅう

○サンフランシスコ人さん、コメントありがとうございます(^o^)丿
有名なバーンズコレクションですね!
私は観たことはありませんが。(^_^;)
by りゅう (2008-01-09 22:04) 

サンフランシスコ人

バーンズの美術館は凄いです!!! いちどだけ観に行きました。
by サンフランシスコ人 (2008-01-12 10:08) 

りゅう

○サンフランシスコ人さん、コメントありがとうございます(^o^)丿
数年前に上野で開催されたバーンズ・コレクション展は
作品の質は勿論、来場者数も凄まじかったと聞いています。
バーンズ・コレクション、是非、観たいです!!(^_^)/
by りゅう (2008-01-13 00:17) 

サンフランシスコ人

バーンズ・コレクションのセザンヌの作品は凄まじいです。
by サンフランシスコ人 (2008-01-15 05:36) 

りゅう

○サンフランシスコ人さん、コメントありがとうございます(^o^)丿
今度画集を借りてきてチェックします♪(^_^)/
by りゅう (2008-01-15 22:21) 

サンフランシスコ人

日曜日読んだ本によると、バーンズ・コレクションの美術館(たったひとつ)のセザンヌの作品数は、フランスの全美術館(たくさん)よりもあるそうです。
by サンフランシスコ人 (2008-01-17 08:35) 

りゅう

○サンフランシスコ人さん、コメントありがとうございます(^o^)丿
セザンヌに限らず、フランス印象派の作品は海外(フランス国外)に流出しているものがとても多いように感じます。
質の高い作品が日本にもたくさんあります♪ヾ( ̄ー ̄)ゞ
by りゅう (2008-01-17 22:02) 

サンフランシスコ人

ペンシルバニア州で、バーンズ財団美術館のセザンヌ・コレクション作品の質を痛感しました。
by サンフランシスコ人 (2008-01-18 02:27) 

りゅう

○サンフランシスコ人さん、コメントありがとうございます(^o^)丿
セザンヌの作品はときに気難しく感じて疲れることがあります。
鑑賞者サイドにもそれなりの心構えが必要なのでしょうか。
静物画の鑑賞が苦手だからそう感じるのかもしれませんが。
サント・ヴィクトワール山は大好きですけどね!ヾ( ̄ー ̄)ゞ
by りゅう (2008-01-18 21:46) 

サンフランシスコ人

「鑑賞者サイドにもそれなりの心構えが必要なのでしょうか。」

バーンズで、画家・作品の解説は一切ないのです!
by サンフランシスコ人 (2008-01-20 06:56) 

りゅう

○サンフランシスコ人さん、コメントありがとうございます(^o^)丿
私の最も苦手とする展示方法です・・・(-_-;)
by りゅう (2008-01-22 21:10) 

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