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魅惑の17-19世紀フランス絵画展 [05展覧会感想]

10日の夕方、南仏モンペリエ ファーブル美術館所蔵 魅惑の17-19世紀フランス絵画展を観に行きました。この展覧会はファーブル美術館の修復工事に伴い実現したもので、来年の2月まで国内を巡回するそうです。(茨城、山梨、大阪、長崎)

~展示構成(HPより)~
Ⅰ.プッサンと17世紀の物語画 Ⅱ.ルイ15世の時代から大革命までの絵画 Ⅲ.新古典主義の諸相 Ⅳ.ドラクロワとピトレスク絵画 Ⅴ.バルビゾン派とアカデミスム派 Ⅵ.クールベと南仏の絵画 Ⅶ.バジールと印象派の時代 Ⅷ.カリエールからマティスまで

ローラン・ド・ラ・イール《笛を吹く羊飼いのいる風景》まず、最初の展示室はニコラ・プッサン《眠るサテュロスのいる風景》、ローラン・ド・ラ・イール《笛を吹く羊飼いのいる風景》、作者不詳《ケパロスとプロクリスのいる風景》といった風景画好きにはたまらないお出迎え。プッサンは午前中の「ベルリンの至宝展」でも質の高い作品に出会えただけに、この作品には特に惹かれるものがあった。作者不詳《ケパロスとプロクリスのいる風景》また、図録によると、この作品はプッサンの初期の傑作で、初期の活動を示してくれる重要な作例だそうだ。また、笛を吹く羊飼いのいる風景》は、風景画としてとても綺麗なもの(構図、色彩等)でしたが、特に手前の羊の毛並み?というかモコモコの質感が、(絵の具の凹凸も含めて)見事に描かれていました。この作品はラ・イールが晩年に多く手がけた風景画の中でも、最も優れた作品のうちの一つだそうです。《ケパロスとプロクリスのいる風景》は、以前は17世紀半ばのパリの風景画家を代表するピエール・パーテルの作品とみなされてきたそうですが、現在は疑問が付されているとのこと。156×138cmというとても大きなこの作品は、手前の廃墟と化した建物のはっきりとしたコントラストと、遠景に見える山並みや空、雲がとても綺麗な青色で描かれたもので、あまり注目はされていませんでしたがとても素晴らしい作品でした。

クロード=ジョゼフ・ヴェルネ《穏やかな海の色》ジョゼフ=マリ・ヴィアンの宗教画はいずれも質の高いもので、クロード=ジョゼフ・ヴェルネ《穏やかな海の色》、ユベール・ロベール《橋》はいずれも落ち着きのあるとても穏やかな作品。ジャン=バティスト・グルーズ《両手を組み合わせた少女》という作品はHPで見た時はかわいい少女だなぁなんて思っていましたが、実物はかなり妖し~光を放っていました。ユベール・ロベール《橋》少女のまなざしは男を誘っているというか、魅了するというか・・・その柔らかな表情とは対照的に、目にはとても強い力を秘めた作品。図録によると、ジャン=バティスト・グルーズ《両手を組み合わせた少女》「組み合わされた手は・・・祈りの時の少女の驚きを示唆している。少女の優しい眼差し、唇、バラ色の頬は、その原因が神秘である感動を表している。微妙に官能的な描写であらわになった肩、興味をそそる投げやりにされた髪の毛の中の真珠、題材の表現として巧みな、いくぶん霞んだように描かれた肌によって、モデルは魅力的であり、灰色、青色およびバラ色の色調は非常に繊細だ。つまり、全てが少女の初物の官能性を発散させるのに力を貸し、そして、それがこのあどけない顔の極端な穏やかさと優しさに接して、さまざまな解釈をよぶ官能性を創り出す」とのこと。

フランソワ=グザヴィエ・ファーブル《プシュケに扮したシャルルモン夫人の肖像》ジャック=ルイ・ダヴィッド《アルフォンス・ルロワの肖像》、ルイ・ゴフィエ《ホランド婦人》の肖像画、ニコラ・ディディエ・ボゲ《ステュムパロス湖畔で鳥退治をするヘラクレス》という風景画は、いずれも写実的で繊細なタッチが特徴のとても綺麗な作品。そして、この美術館の名前にもなっている、フランソワ=グザヴィエ・ファーブルの作品群。いずれも素晴らしい作品ばかりでしたが、特に《プシュケに扮したシャルルモン夫人の肖像》は優雅で上品、穏やかで優しい表情と滑らかな肌の質感は観る人を魅了するとても素晴らしい作品。ファーブル《ナルキッソスの死》、アシール=エトナ・ミシャロン《レムノス島のピロクテテス》という風景画は、いずれもとても繊細なタッチと洗練された色合いの素晴らしいものでした。
ニコラ・ディディエ・ボゲ《ステュムパロス湖畔で鳥退治をするヘラクレス》 アシル=エトナ・ミシャロン《レムノス島のピロクテテス》

ウジェーヌ・ドラクロワ《室内のアルジェの女性たち》は、暗い色調で迫力のあるなかにも何かけだるさが漂っている不思議な感じ。「・・・ルーヴル美術館の作品と同数の人物が描かれてはいるが、光の当たらない右の部分にいる召使の女性が、右からの光を通している重々しいカーテンを持ち上げており、そのおかげで、演劇的な効果が強調されている。・・・こちらの作品では室内装飾をより単純化し、ルーヴルの作品ではより静的で古典的な様相を見せていたこの情景を、バランスのとれたものにした」だそうだ。

アレクサンドル・ルイ・マリー・テオドール・リシャール《ポーの町と城の眺め》は、バランスの取れた構図と、とても綺麗な色彩。この展覧会の風景画のなかで最も素晴らしい作品だと思います。「この作品を見る者は、ギャラリーの中に居ながらにして、この見晴らしの良い場所を散歩し、景色をじっくりと眺める楽しみを味わうことができる」とのこと。まさに、その通り!!

ジャン=バティスト=カミーユ・コロー《朝、霧の効果》は、25.3×35.4cmと小さいもので、チョット期待はずれ・・・。とはいえ、霧によるボヤボヤ感がとてもうまく表現されている素晴らしい作品です。アレクサンドル・カバネルの肖像画は、布や肌の質感がとても滑らかに描かれている、とても素晴らしいもの。

『私は正しかったのだ。私はあなたに出会えたのだ。』・・・チラシにある、この言葉が全て!!!

ギュスターヴ・クールベ《アンブリュッサムの橋》今展覧会のメイン、チラシの表にも使われている、ギュスターヴ・クールベ《出会い、こんにちはクールベさん》。先日、クールベ美術館展を観たということもあり、とても興味深く観ることが出来ました。この作品は作品自体も素晴らしいものですが、クールベという人の性格とそれまでの過程(人生)を予備知識として持っていると、この作品の持つ意味がとても深いということがわかると思います。《アンブリュッサムの橋》や肖像画等もとても素晴らしい作品でした。(図録で確認しましたが計6点ありました。先日のクールベ展もそうでしたが、クールベの作品をまとめて観られるのは、貴重なことだと思います。)

最も注目し、期待していた画家、「フレデリック・バジール」

印象派の画家達のなかで重要な役割を果たしたフレデリック・バジールの作品を今まで観たことが無く、この展覧会で観ることができるということでとても楽しみにしていました。とはいえ、せいぜい、2,3点だろうとあまり期待しすぎないようにしていました。ところが、後で図録で確認すると5点も!(展示会場では夢中になって観ていたため、作品数は把握していませんでした。)しかも、いずれも力強さと繊細さを兼ね備えたもので、特に《身づくろい》はとても素晴らしいもので、なかなか作品の前から離れることが出来ませんでした。ちなみに、バジールの作品を夢中で観ていたのは私だけでした・・・

アルフレッド・シスレー《羽を広げられたあおさぎ》アンリ・マティス《黒いナイフのある静物》は、暗い色調で晩年の明るい色彩のものとは全く異なる画風でチョット面白かった。マティスの鮮やかな色彩を期待して観に行くとショックを受けるかも。(最も、マティスの晩年の鮮やかな色彩のものがこの展示会場にあったら、明らかに浮いてしまって、それまでの展示構成が全てぶち壊しになってしまう!)ジャン=バティスト・アルマン・ギヨマン、アルベール・ルブール、アンリ・ジャン・ギヨーム・マルタン等の作品も見応えのあるものばかり。

さすが、修復工事に伴い実現したというだけのことはあるなぁと言う感じ。質の高い素晴らしい作品が出し惜しみすることなく、揃っている!!宗教画、肖像画も素晴らしいものばかりですが、特に、風景画好きにはたまらない!!(まぁ、ビッグネームばかりを期待している方にはちょっと物足りなさを感じる展覧会かも・・・)また、音声ガイドはありませんでしたが、展示会場の随所に図録のサンプルが置かれているので、気になった作品があったらいつでも、図録の解説をチェックできます。(イメージとしては国立西洋美術館の常設展示室)これは、解説のみならず、人の流れを避けたり休憩も兼ねているので、とても親切なサービスだと思います。

ニコラ・ド・ラルジリエール、ジョゼフ・ヴェルネ、ユベール・ロベール、ウジェーヌ・ドラクロワ、カミーユ・コロー、ジャン=フランソワ・ミレー、ギュスターヴ・クールベ、アルフレッド・シスレー、ウジェーヌ・カリエール、ルーヴル美術館のアルジェの女たちにヒントを得て描かれたルノワール《アルジェリア風のパリの女たち(ハーレム)》等国立西洋美術館(上野)の常設展示で17-19世紀絵画が好きな方にとってはたまらない作品群だと思います。上野で、これらの画家の作品について他にも観たい、あるいはこのジャンルの作品について掘り下げて観たいという感想をもった方にはおすすめの、とても素晴らしい展覧会だと思います。

  • 図録:2000円(税込)

損保ジャパン東郷青児美術館(http://www.sompo-japan.co.jp/museum/index.html

 

表裏

【東京展】 損保ジャパン東郷青児美術館:2005年4月23日~7月15日
【茨城展】 茨城県立近代美術館:2005年7月30日~9月11日
【山梨展】 山梨県立美術館:2005年9月17日~11月3日
【大阪展】 大阪市立美術館:2005年11月15日~12月25日
【長崎展】 長崎県美術館:2006年1月11日~2月12日


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